今日もスオウさんは絶好調だ。島を離れて一週間、娯楽の乏しい海の上で、欲求不満を表すように手当たり次第口紅を塗り付けて遊んでる。レイリーさんにロジャー船長、バギーなんかも、甲板にいた奴らはみんな唇が真っ赤だった。寝坊したおれが起きる頃にはその一騒動も落ち着いていて、スオウさんは素知らぬ顔でハンモックに揺られながら本を読んでいる。
「…おはようスオウさん」 「おそよう。もう昼だぞ」 「…スオウさんが夢にまで出てきておれにセクハラするから…夢見悪ィ…」 「とんだ言い掛かりだ」
欲求不満なんじゃねェの、と喉の奥で笑って、スオウさんはおれの唇に口紅を一塗り。寄せられた唇はいつもみたいに軽いから、確かにおれは、欲求不満だ。
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