「シャンクス、これはどうだ?」 「いいやつ?」 「まあまあ」 「じゃあ、それ買って」 「ん」
武器屋でスオウさんが奥の方から持ってきた剣は、鞘まで綺麗に磨かれて蛍光灯の明かりを反射していた。まだ目利きが出来るほど経験のないおれは、スオウさんに判断を任せてねだる。飴でも買うようにあっさり頷いたスオウさんは、早速店員に声を掛けて懐から札束を次から次へと出していた。ぎょっとする。値札も何もついていなかったから予想するしかなかった値段より、0の桁が二つは違う金額だ。この間バギーにやっていた小遣いなんて足元にも及ばない。おれは慌ててスオウさんの服の裾を引いた。
「待って待って、その剣そんなにすんの!?」 「まあまあいいやつだって言ったろ」 「あんたのまあまあとおれのまあまあ違う!」 「慰謝料なんだろ?貰っておけよ」 「あれは冗談で…!」 「うるせェなァ。どうせ端金だ。お前の腕でナマクラ使ったんじゃあすぐ使い物にならなくなっちまうんだから、いいもん買ってやるっつってんだよ」 「……………ありがとう」 「ドーイタシマシテ」
にやっと笑ったスオウさんを店員は微笑ましい顔で見詰めて、おれに話し掛けた。「優しいお兄さんだね」。確かにそうだ。だけど調子が狂う。スオウさんはこんな、優しいお兄さんなんかじゃないはずなのに。
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