「スオウさん、おれ、レイリーさんがいるから」
いつも通り真っ赤に塗られたおれの唇にスオウさんの唇が寄せられそうになって、レイリーさんに言われたことを思い出した。ぽつりと呟くと、それ以上スオウさんが近付いてくることはない。動きが止まった。珍しくてどきっとする。スオウさんの目は驚きに見開いて、おれを凝視していた。こんな顔、見たことない。
「………………レイリー?」 「…っ、て、言ってみろ、って、レイリーさんに、言われた…」
低く呟かれた声に寒気がして、ついついネタばらしをしてしまうと、至近距離にあるスオウさんの顔はみるみる歪んでいく。 あ、怒った。殴られるかも、と思って体を硬くしたけれど、スオウさんはゆっくりとまたおれに近付いて、皮膚が擦れ合う程度のキスをしたかと思うと、ゆっくり離れて、おれを叱りもからかいもせずに背を向けた。
「 レイリー!!」
吠えるみたいな声。空気がびりびり震える。いつも飄々としたスオウさんには、本当に珍しい。やっぱり怒ってたけど、それはおれにじゃなくて、レイリーさんに矛先が向いてるようだ。なんでだろう。おれにはさっぱり、わからない。
|