「おれはキャプテンに嫌われてるんだろうか」
有り得ないことだ。ペンギンは心の中だけで答えた。
ばらばらにされた体をくっつけてもらったヤマイだが、まだひとつだけ足りないものがある。左手に嵌めていたはずの指輪が、いつものヤマイから足りない。「…とられた。大事な、」。その後の言葉は掠れてしまって聞こえない。肩を落として遅い朝食をとるヤマイの姿は情けないが、頗る機嫌の悪いローに「返しなさい!大事なものだから!」と反抗しただけ見上げたものだ。
ヤマイは元々単なる町医者で、ハートの海賊団に入ったのもつい最近のこと。だから気付いていないのかもしれないが、仲間をばらばらにするほど機嫌が悪いローに盾突く勇気はペンギンに、ましてシャチや、ベポにすらない。ヤマイは勘違いしている。ローが誰にでもああいった態度をとるのだと思っている。
「返すよう、おれからもさりげなく言っておいてやる」
「……ありがとう」
ヤマイは早く気付けばいいんだ。自分がどれだけ気に入られているかを。