ロー長編 | ナノ


ペンギンは、嘘じゃないかと疑っている。ローのあの態度だ。嘘じゃないかと疑うほど、ヤマイに心配させるような生活を送っている。
何かに夢中になると寝食を拒むローの悪癖は、確かに以前からあった。その度にクルー全員が心配して、ヤマイほどではないが口煩くしていたものだ。
けれどローは何を言われようが寝たくなければ寝ないし食いたくなければ食わない。それがどんな特別な相手に言われたとて、非常時でもない限り動かないのはもはやローの確固たるプライドですらある。だからこそおかしい。あんな馬鹿みたいな取引で、ローが動くだろうか。シャチはバカップルだ惚気だとむすくれていたが、ペンギンには違和感しかない。

ローは、出航の予定は変えないという。ログが溜まり次第この島を離れる。略奪の予定はない。それはつまり、ローがあんなにも執心している本や論文、医学書にも、あっさりと決別するということだ。だから、嘘なんじゃないかとペンギンは思う。ヤマイの意識を自分から離さないために、わざと、あんな。

「…面倒だな」
「え?なにが?当番が?」

今日の皿洗い当番を共にするヤマイは、がしゃがしゃと音を立てて重ねた皿を食堂のテーブルから洗い場に運ぶ。その顔は脳天気な表情で上機嫌に笑っていた。朝食の間、ずっと嬉しそうだ。ローが普通の生活をするだけでそんなに嬉しいのか。それはどんな感情だ。医者としての喜びか。親心か。それともローが望んでいるような感情か。
「ヤマイは船長が好きか」。ペンギンの唐突な質問に、ヤマイは目を少しだけ丸くして、それから柔らかく笑った。「好きじゃなきゃ、男となんか一緒に寝れない」。それはそうだ。ならば同じ男であるローもそう思うはずだということを、ヤマイはちっとも気付いていないらしい。ローを誰より見ているくせに、大事な部分は盲目のようだ。


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