「よォご両人!おっめでとー!…って雰囲気じゃねェなオイ」
二人が納戸の中に入って10分程度。二日酔いに苦しむエースは置いて、イゾウとおれは納戸から少し離れたところで待機していた。おそらくはくっついたであろうホモを全力でからかおうとしていたためだ。しかし開いたドアから出てきたのは、照れ臭そうな顔でも嬉しそうな顔でもない。凶悪犯のような面をしたマルコと、憔悴しきったイサキだ。何故そうなる。おれ達は納戸がイカ臭くなるんじゃないかとすら心配するくらい、あれは王手の兆しだっただろう。
「え、マルコお前…言ったんじゃねェの?」
「こいつが信じねェんだよい!」
「信じないィ?どういうこっちゃ」
思い人から告白を受けた直後には見えないほど暗い影を背負うイサキに聞くと、比喩でもなく蚊が鳴くよりも小さな声で「だって、マルコがおれを好きなんて、有り得ないし」と答えた。「うわ」。ドン引きの声を出したのはイゾウだが、おれだってドン引きだ。エースがこの場にいたら、うじうじすんな!と殴っていたかもしれない。いや、既にマルコに殴られたから、あんなに頬が腫れているのか。
「おいおいマジかよふざけんなよ…!マルコはなァ、お前が女買いに行くって聞いただけで自棄酒して二日酔いになるし、イゾウやおれがお前にくっついたら殺気すら飛ばしてくンだからな!お前と話してるだけのナースちゃんにも敵意剥き出しでおれに邪魔してこいとか言って、お前がさっさと引き取ってくれないと周りが超迷惑すんだよ!」
「おいサッチ!」
「うるせェマルコ!お前も無駄にカッコつけてっから面倒くせェことになるんだよ!」
「誰がカッコつけてんだよいっ!」
「お前だよ!イサキにばっかいいとこ見せようと我慢したって、結局皺寄せがおれに来るんじゃねェか!」
早口で今までの全てをばらしてやれば、イサキは目をぱちくりと瞬かせて、おれと、それから図星を突かれて口ごもるマルコを見た。イゾウが促すように軽くイサキの背中を蹴る。よろめいてマルコの前に近付いたイサキは、躊躇ったように口を開けて、閉じて、それからやはり小さな声で、確認した。
「マルコ、本当に、おれのこと好きなのか?」
「だから、さっきっからそうだって言って…!」
「
たった一言だったけれど、気持ちが通じない歯痒さでいらついていたマルコの声を捩じ伏せた。それしか言えなかったイサキの、真っ赤な顔を隠す手の平が震えている。マルコもつられて真っ赤になって、