あれ?
目を覚ましたら、自分の部屋ではなかった。隊長格以外は適当に分けられた大部屋で寝起きしているはずなのだが、そこはいつもの1番隊に宛てがわれた寝室ではない。ベッドはひとつ。一人用の机と椅子。私物は少ない。壁に掛けられた魔よけの人形は、何年か前に寄った島で、あまりに顔が不死鳥に似ていたからおれが勝手に飾ったものだ。
…あれ?
体の中心が冷たくなって身じろぎをすると、肘にこつんと何かが当たった。思わず驚いて跳びはねる。ぎしりと鳴ったベッドの上に、おれだけじゃない。何かがいる。いや、何かじゃない。何かが何かなんて、もう、心臓がうるさいくらいに気付いている。
掛布から覗いた頭は、明らかに、マルコだ。なんでここにマルコが、いや、マルコがいたっておかしくはない。ここは1番隊隊長の、マルコの部屋だ。いておかしいのはおれの方で、おれは昨晩エースとイゾウの三人で飲んで、潰されそうだったから潰そうとして、けれどイゾウがしぶとくて、イゾウの顔が真っ青で、お開きにしようって言う頃には頭がふわふわしてて、イゾウが部屋に連れていってくれて
おれに背を向けて寝ている様子のマルコは、しかし眠ってはいないようだ。おれが起きたことをちらりと横目で確認してから、また向こう側を向いた。合った目は、何を思っているのかわからない。それがひどく怖い。昨日のあれは、あの夢は、どこまでが夢だったのだろうか。おれは、どこまでマルコに伝えてしまったのだろうか。
怖い。
息が詰まって、体が動かない。
「……諦めたって、なんだよい」
耳に痛いくらいの沈黙に、ぽつりとマルコの声が落ちた。
…うわあ、うわああああ、うわああああああ!!!!