マルコ長編 | ナノ


マルコがキスをしてくれるから、これは夢だと思った。何度も何度もくっつくだけのキスをして、どうしようもなく愛しくなる。緊張した様子のマルコが可愛くてたまらない。どうせ夢なら、明かりもついていてくれたら良かった。そうしたら、マルコの顔がもっとよく見えたのに。

完全に諦めたはずなんだけどなァ。起きたらきっと、女々しい自分に自己嫌悪するんだろうなァ。
分かっていてもたっぷり酒の入った頭はふわふわとしていて、気が大きくなる。
マルコの腕を引き寄せて、おれの腹の上に乗せた。少し戸惑いながら、それでもまた唇を寄せてくるマルコに、胸の中が満たされていく。この重みや、ふっくらとした唇の感触が夢だと思いたくない。けれどマルコがおれの思い通りに動いてくれるから、夢でしか有り得ないと分かっている。息継ぎの為に少し開いた口の中に舌を入れても、一瞬体が強張っただけですぐに応えが返ってきた。なんていい夢だ。

「…ふ、」

小さく漏れる声が、服越しでも熱いと感じる体温が、ひどく愛しさを募らせる。好きなままでいられたら、どんなに幸せになれるかと思わせる。だけどこれは幻だ。本物のマルコは、おれを幸せにはしてくれない。

「…まるこ」
「ん、」
「すごい、しんぞー、ばくばくしてる」
「…うるせ、よい」
「かわいい」
「ばか、いってんじゃ…」
「すきだよ」

キスの合間に零れる会話が、おれの言葉を最後に途切れる。マルコの細い目が限界まで開かれて、うそだと言わんばかりにおれを見つめていた。嘘じゃない。好きだった。何年も何十年も、マルコのことばかり考えてた。手の内に入らないことが苦しくて辛くて、それでも愛しかった。

「すきだったよ、ずっと」
「…う、」
「うそじゃない。おれがほしかったのは、まるこだけだ」

逃げ腰になるマルコの体を引き寄せて、強く抱きしめた。熱いくらいの体温が気持ちいい。幸せで、満ち足りていて、このまま眠ってしまいたい。いい夢が悪い夢に変わらないうちに、早く終わらせてしまわないと。突き放されたら、夢でもおれは、死にたくなる。

「こんなことさせて、ごめんな。だいじょうぶ、もう、あきらめたから」

すきだったよ、まるこ。
ふにゃふにゃした声でそれだけ告げて、深い眠りに入っていった。ああ、なんていい夢だ。


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