頭を押さえながらふらふらと歩くイゾウを見つけて、「おい、そっちは?」と話しかけると視線と口元だけで作戦の成功を伝えられる。にやりと笑ってはいるが、顔色は真っ青だ。酒の匂いが強く漂っていることからして、イゾウも随分飲んだらしい。
「くそ…イサキめ、おれにまで無理矢理飲ませやがって」
「エースは?」
「あいつは早々に返り討ちにあって潰されたよ。最終的にはおれが一人でイサキ酔わせてマルコの部屋にぶち込んできた」
「イゾウくんやっるゥー」
「ったりめェだ」
二人とも下手に理性があるもんだから、言いたいことも言えなくて思いもよらない方向に誤解を招く。最近まで言わなくていいことまでべらべらと話し合ってたくせに、どんな心境の変化か知ったこっちゃないが、おっさん二人がもじもじもじもじしてるのは見ててまったく面白くない。さっさとくっつくならくっついてもらわないとからかって楽しむことも出来ないのだ。イサキにだって脈はあると思う。あんなにもマルコのことでぐらついているのがいい証拠だ。
「こっちはマルコが逃げ出さないように外から閂掛けてやった。開けてやらない限り二人っきり。ばっちし!」
「ドアぶち壊して逃げたらどうする?」
「そんときゃァオヤジに怒られちまえばいいさ」
「そりゃァいい」
にやっと笑って、そのままイゾウは自分の部屋に戻っていった。さて、おれは遊びにでも行こうかね。あとはなるようになれ、だ。