「もうおれの胃袋はぼろぼろだ…」
ぐったりとテーブルに突っ伏してサッチが嘆く。歳をとると胃もたれがしやすくなるというが、それだろうか。
「肉食ってやろうか?」
優しさで提案したおれに、サッチは眼光鋭い目付きを返す。朝食の乗ったプレートをおれから庇うように抱え込むと、唐揚げを口に頬張りながら「エース、お前に聞くが」と神妙な様子で声をひそめた。
「イサキのことが好きなのか?」
「ブッ!!」
「汚ェな!」
「ばっ、サッチが阿呆なこと言うからだろうが!有り得ねェ!!イサキだぞ!?」
「声がでけェ!」
なんだなんだとこっちの様子を伺う目はあるが、騒がしい食事の場では喧嘩も言い争いもそう珍しいことではない。サッチに窘められて静まればすぐに注目は外れて、話は再開した。重たい溜息を吐いたサッチの声色は、話し掛けてくる前より随分と軽くなっている。
「よかった…お前までイサキが好きとか言い出したらおれはもうどう動けばいいのかわかんねェよ」
「………お前、『まで』?」
「マルコとイサキがおかしいのは、お前も気付いてンだろ?」
「あ、ああ…」
イサキもマルコも、今朝はまだ会ってない。イサキには昨日の真意を聞きたかったのに、それも果たされないままだ。
「仲直りさせたいよな」
「ま、そりゃ…」
「心配だろ?お前イサキと仲良いもんな」
「ん、まァ…それだけじゃねェけど…」
「協力しろ」
「…何を?」
「
企んだ顔のサッチから詳細を聞く前に、朝食を持ったイゾウがサッチの隣にどすんと座った。二人とも何だか疲れた表情だ。おれが寝ている間に何かあったんだろうか。
「いいか、やることは簡単だ」。サッチはさも重大な任務のように声を低くして話し始めた。決行は今夜。上手く行けばいいんだけど、そんな作戦で大丈夫か?