マルコ長編 | ナノ


「…イサキ、離れろ、こら」
「やだ」
「やだじゃない、かわいくない」
「断る」

マルコの視線が本気だ。なんだあれ。イサキは頑なにマルコを見ようともせず、それどころかおれに一層強くしがみついてきた。ぎゅうぎゅう抱きしめられる度、青い炎が殺気にも似た覇気を宿して燃え上がる。その後ろにいるサッチは、もはや死にそうな顔でぱくぱくと口を動かしていた。何か叫びたいようだ。しかし声が出ないほど、どうやらこの状況はよろしくないらしい。さっぱり来し方が把握出来ないが、こうまで張り詰めた空気が流れていたら嫌でも理解できる。気付いていないのはイサキくらいじゃないのか。いや、気付いていて無視してるのかもしれない。マルコと喧嘩したのか。やめろおれ達を巻き込むな。あの怒り方、尋常じゃない。

    離れろって、言ってンだろうが!」
「いてっ」

腰にさしていた短銃で思いきり脇腹を殴り付けると、さすがによろめいて距離が出来る。無防備になった鳩尾を思い切り蹴り飛ばした。

「ぐっ…!」
「何があったんだか知らねェが、おれを巻き込むな!」

よたよたとよろめいて、イサキはマルコの方へ。しかしマルコにぶつかることはなく、寸前で立ち止まって噎せた。げほげほと苦しそうに咳をするイサキを、マルコは無表情で眺めている。イサキはまだマルコの方を見ない。異様だ。あいつらホモなんじゃねェのと影で噂されるほど仲のいい一番隊コンビの姿ではない。
やがて呼吸が落ち着いたイサキは、「イゾウ容赦ねェ…」と呟いた後にふらふらとどこかへ去って行ってしまった。最後までマルコを見ない。マルコは、ずっとイサキを見ていたというのに。

「…おい、なんだありゃァ」

マルコは答えない。サッチに聞いても、強張った顔のまま首を振られるだけ。
なんだっていうんだよ、一体。


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