マルコ長編 | ナノ


マルコが変だ。大変だ。

イサキの話とマルコの珍しい仕種を繋ぎ合わせたらピンと来てしまったおれは、満面の笑顔でマルコをからかおうとしたのに、からかえる雰囲気ではなかった。
背中から負のオーラが出てる。何かを恨んでいるかのように顔が歪んでいる。
あ、これからかったらいけない空気だ、と察知したおれは、引き攣った顔をきりっと引き締めてやたら落ち込んでいるマルコの肩を叩いた。

「よっ!お疲れ!お前の言った通りすごい時化だったなァ!」
「サッチ…今はお前と話す気分じゃねェよい」
「お?なになにどうした?お前といいイサキといい…おかしいぞ?」
「イサキ、」

跳ねるように反応した顔が、イサキの「おかしい」の意味を聞いている。笑い出しそうになる口元を隠して、「お前蹴ったの?この間酔ってキスしたことやっぱ怒ってんじゃないかって落ち込んでたけど」と伝えてやれば、あからさまにマルコはうろたえた。冷静なマルコがこんなに感情をあらわにするなんて珍しい。おれのピンと来た勘が当たっていたことを確信して、どこかむず痒い気持ちになる。この歳になるとあまり感じることのない青い感情だ。

「雨ざらしになってたから、今頃シャワー浴びてんじゃね?なんか誤解ならさっさと解いてこいよ」

頼りなくなってしまった背中を押すと、マルコが覚束ない足取りで歩き出す。気分は恋のキューピッドだが、なんだろうな、あの背中。すごく、嫌な予感がする。


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