SSリクエスト祭4 | ナノ


「おうサボ、おつかあ゛っづい゛!!」

ぼん!と音を立てて発火した体に、肩に置こうとした手を慌てて引っ込めた。今回の一件でサボがメラメラの実を食べたということは伝え聞いていたが、いざ目の前で人体から炎が上がる光景は結構迫力があるもので思わず大声を上げてしまった。
サボも元から真ん丸の目をさらに真ん丸にしているので、無意識のうちに能力を使っていたのだろう。おれはロギア系どころか能力者でもないので自分が火になるという感覚がわからないが、慣れていないとちょっとした拍子に発火してしまうものなのだろうか。

「びっくりした…」
「いやおれもびっくりしたわ。それってコントロール難しいもんなの?しばらく消火器携帯必須?」
「いや、だいぶコントロール出来てきてるとは思うんだ」
「そっか?後ろから話しかけたからびっくりした?」
「ん、いや…まあ、そんなもんだ」

どこか歯切れの悪いサボは、帽子のツバを下げながら曖昧に頷いた。いつも余裕たっぷりに笑っているのでよっぽどのことがなければ動揺しない男なのかと思っていたが、死角から声を掛けただけで驚いたのだとしたら人間らしくて少し可愛いなと思った。それとも仕事が終わったばかりで気持ちがたかぶっているのだろうか。今回ようやく例の弟くんに再会出来たというし、高揚しているのであればそれが体に現れても仕方がない話だ。

「まあサボなら平気だと思うけど、危なそうだったらすぐ言えよ」
「危なくなんかならねェよ」
「わかんないだろ、寝ぼけて部屋燃やしちゃうかも」
「確かにそれは困るな」
「だろ?」

肩をすくめて冗談を流すみたいに笑ったサボは、もういつも通りの顔をしている。今回はいつもの革命軍の仕事とは違う心境で臨んでいただろうし、なにか迷いや動揺がうまれたらと思うと心配だったが、この様子なら大丈夫そうだ。
意識していなかったが案外心配していたらしく、ホッと気が抜けておれも笑ってさらに冗談を追加した。

「だからさァ、おれが一緒に寝て見あ゛っづい゛!!!」

一緒に寝て見張っててやるよ、という言葉は最後まで言えなかった。またも目の前のサボから火柱が上がり、鼻先を炎が舐めたのだ。
一瞬だったのでさほど熱くはないのだが、生き物の本能として炎は危険なものとして刻まれているせいか本日2回目の大声を出してしまった。口を大きく開けて目をぱちくりさせていると、サボも驚いたのかまた真ん丸の目を真ん丸にしている。

「…ど、え…」
「…防炎素材のベッドにしてもらうから、大丈夫だ」

おれが動揺している間、何事もなかったかのようににこっといつもの笑顔を作ったサボが怖すぎる。
もしやこいつ、今までずっとおれの冗談に笑顔の下で腹を立ててたのでは…?要件人間のサボがおれのちょっとした冗談には対応してくれていたので結構好かれていると思っていたが、メラメラの実という体に大きな変化を齎す要因を得て現れた攻撃性の矛先がおれの言動だとしたら、それってつまり。

「サボ…お前、もしかしておれのこと嫌い?」

返事は本日3回目の火柱。その瞬間、おれたちの友情ごっこは終わりを迎えたのだ!!!

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