Q.コラソンが大好きなので二度死ぬ男は何度も読ませていただいているのですが、以前「裏設定をアホほどつけている」と言っていたのが気になっています。ちょっとだけでも教えてくださると嬉しいです。
A.主人公くん:家族が世界の中心だった幼い時期に家族を失ったせいで病的なほどのファミリーコンプレックス。大事なものは家族。生きる意味も家族。妹弟がいっぱいいる長男なので面倒見がよくて責任感が強い。下の子たちの兄弟喧嘩とかで怪我人が出たら忙しい両親から「お兄ちゃんちゃんと面倒見てあげて!」と叱責に近いお願いをされていたので無意識下で家族内のいざこざは「おれがもっと上手く面倒見れてれば」と自分を責めやすい性格になった。その上での海賊事件だったので「おれがもっと強かったら」と思い込んでずっと後悔しながら生きてる。他人に頼るということをまずしない。考えられない。選択肢がない。
雑用として強制労働されてた海賊からの解放は、幼少ドフラミンゴが海賊に絡まれていたところを「もうおれみたいな被害者を出してたまるか」とカッとなって後ろからナイフでブッ刺して「逃げろ!」と言ったところをちょうどトレーボルやディアマンテが来てくれて海賊全滅、そのままドフラミンゴファミリーへ加入。「若が来てくれなかったらおれはずっとあのままだった」ってにこにこ笑いながら忠誠を誓っているけど、ドフラミンゴにしたら救ったという意識はない。お前がいきなりキレただけだろって思ってる。思ってるけど言わない。言ったところで「若が救ってくれたんだ!」って主張されるからそういうことにした。主人公的には大事なのは海賊からの解放じゃなくて、新しく『家族』と呼べるひとたちを与えてくれたのがなによりの救い。
家族大好き家族大事家族愛してる。家族家族家族家族。主人公より後に入ってきた人達からみれば優しくて明るいお兄ちゃんだけど、ドフラミンゴや最高幹部は主人公がちょっとイかれてるのを知ってる。視野が異常なほど狭い。家族がいるから安定してるだけで、家族を取り上げられたら発狂する。
コラソンの裏切りも、海軍に情報をリークされてるっていうドフラミンゴファミリー全体の存在を揺るがす事態なのに、「兄弟だって喧嘩くらいするよな!」って程度にしか考えてない。他人ならまだしも、実の血を分けた兄弟ってところで仲直り出来るって思い込んでる。だからコラソン処刑に反対して死んだ。ここでも「おれがもっと上手く出来てたら、せめてコラソンが殺されることはなかったのかな」と思ってる。自分が死ぬことはさして重要視してない。
転生後は死亡時ドフラミンゴに切り落とされた足を引きずったまま生誕。生まれつき左足が不自由な身体に。しかし記憶も引き継いでいるので「なるほどこうなるか」と妙に冷静な息子にむしろ両親の方が心配してしまう。ドフラミンゴに対しての恨みはさっぱり無い。だって家族だし、喧嘩くらいするでしょ。前世で弟と喧嘩して腕にぶっ刺された鉛筆の痕とか大人になってもずっと残ってたし、そんなもんでしょ、っていう認識。
前世と同じように弟と妹もたくさん生まれて、でも前世と同じ状況になるにつれまた繰り返すんじゃないかと徐々に恐慌状態に陥るようになる。「父さんと母さんが死んじまう、妹と弟が連れていかれる」と度々パニックになる長男を家族はちょっと不安に思いつつ、普段はとってもいいお兄ちゃんなのでなだめるけど、頻度が高くなるにつれて精神病院へ通わされるようになった。自分がおかしいだけで、もしかしたら前世なんてものは妄想なのかもしれない、真実だったとしても、同じようなことは起こらないかもしれない、と落ち着くようになったある日、両親は強盗に殺され、弟達は全員行方不明。警察が捜索しても犯人が見つからない中行われた葬儀で、親族がこそこそと「どうしてあの子が残ったのかしら」「あの子がいなくなればよかったのに」と陰口を聞いているのを聞いて全てが崩壊した。というより納得した。「ですよねー」って感じ。こうなることを知ってたくせに、何を甘えてたんだって感じ。
この時点で主人公は「家族は自分で守らなければならない」「自分の言葉は誰にも届かない」「自分は生きる価値のないクソ」という認識がべったりとこびりつく。元々が根明な性格だったので、それは「正しい自己評価」と認識して必要以上に落ち込むことはない。自分は何度も同じ過ちを繰り返すクソ野郎なんだから、今度こそうまくやらなくちゃと無駄にポジティブ。そのせいで主人公の病んだ部分には誰も気づけないようになった。
葬儀が終わり次第、すぐさま行方をくらました主人公はドフラミンゴを探すようになる。「今度はきっとうまくやるから」「今度は絶対だれも死なせないから」「今度はなにも期待なんかしないから」。まだ小さな子供が片足で駆けずり回って、数年後ようやく見つけたドフラミンゴは主人公が昔出会った時よりさらに幼い頃のドフラミンゴ。まだ最高幹部組と出会ったばかりで、主人公も「おれの王様」と崇めるようになって最高幹部組の仲間入り。最高幹部組が「ドフィ」と呼ぶのに対して主人公は「若」呼びなのはどうしてだって聞かれるけど、「若い王様だから、若だろ」って答える。昔からの癖だとはもちろん言わない。ドフィは一線置かれてるようでちょっと不満。まだ力の弱いドフラミンゴやヴェルゴを率先して盾になって守るのは主人公だったので、二人とも少しだけ主人公を兄みたいに思ってた。
主人公は前世ではパワーファイタータイプだったけど、足の使えない今世ではブレーンタイプ。情報操作と人脈を使っての取引はお手の物。幼い容姿も障害者であることも武器にして相手の油断や同情を誘う。もちろん最低限の武力も使えるよ。片足でもわりと動けるけど自分のスペックはファミリーにも全部は明かさなかった。いざというときの切り札は大量に残してたけど、隠し事をすることに罪悪感はまったくない。だって嘘ついてないし、ついたとしても家族のためだし。主人公は人脈を作ってるあたりで、他にも前世を引き継いで生まれてきた人と出会って前世で自分が死んだあとドフラミンゴファミリーがどうなるかを知ったのでますます「コラソンを死なせたらダメだ。ローに恨みの種を与えてはダメだ」と思い込む。ちなみにこの前世を引き継いだ同志はセフレ主。歴史が繰り返すなら、止めてほしいとは言えない。守りたいとも言えない。ただ少しばかり掻き回して、行く末を見守るくらいはいいだろうと思ってる。
ロシナンテが二代目コラソンになったとき、「ああ、いよいよ」と思って準備を進めた。ドフラミンゴも知らない貯蓄を作り、人脈を用意して、いつでも駆け込める『逃げ場所』を確保した。その上で一縷の希望にかけて、優しくして慈しんで大切にすることで「海軍を裏切ってそのままこちらにきてくれないか」とも思ってたけど無理だったし、接する頻度が多くなることで「やっぱりこいつのこと好きだなァ」と思ってしまう。ただしこの時点で主人公にとっては家族>>>>>>>>>恋なので、好きだからどうしたいとかいう気持ちはもはや枯渇してる。コラソンの態度で「こいつももしかしておれのこと好きなのかな」とは感づいてるけど、それがどうしたって感じ。コラソンの恋心があろうとなかろうと、主人公はまったく気にしないし関係ないことだと思ってる。だって例え恋をしていたとしても、自分は相手にとって大事なことを何一つ話してもらえなかったカスだから。コラソンのことはちゃんと好きだけど、好きなだけで十分な自己満足野郎なので本編後もきっとコラソンがじりじりすると思われる。
自分が死んだことにした時も、誰かが泣くことまでは全く想像していなかった。あとでローやコラソンに「あの時はみんなが悲しんでた」って聞いても「そう、でもすぐにいつもの日常になっただろ?」って全部知ってるんですよって体で答えるから多分ローとコラソンは主人公の自己評価の低さに愕然とする。主人公がイかれてることはローとコラソンは多分一生気付かない。底なしに優しくて冷静で少し鈍感な男だと思ってる。違うよ、病的なファミリーコンプレックスなんだよ。その人は『家族』という『記号』がなによりも大事なんだよ。
っていう裏設定でした(長い)