SSリクエスト祭3 | ナノ


真面目で神経質なグラディウスは恋人同士のスキンシップにすら過敏に避けてしまう癖があって、セックスはおろかキスやハグですらそう滅多にさせてもらえない。極めて少ない露出の中で唯一無防備な額に口付けるだけでも「ふしだらな」と真っ赤になって破裂しそうになるまで怒るのだから、セックスはもちろんキスやハグといったスキンシップが好きなおれにとっては毎日がおあずけ状態である。
しかしおれはめげなかった。怒られようと振り払われようと何度でも、指を絡めて手を繋ぎ、マスク越しにキスをして、体温を伝えるように抱きしめていれば、純粋な腕力では敵わないグラディウスは『諦めるしかない』といった体であまり抵抗をしなくなってきた。口ではしっかり文句を言うけれど、本当に嫌なことは破裂してでも拒否をすることは今までの経験上おれが一番よくわかっている。グラディウスが無条件でなんでも受け入れるのはこの世で唯一若様に関することくらいで、おれなんか何度あの髪針の被害を受けたことか。それでも付き合ってくれてるし、少しずつ譲歩してくれてるんだから、おれは相当グラディウスに愛されている。そしておれも、グラディウスを愛している。なのでいつだっていちゃいちゃしたい。


「グラディウスただいまー」
「…帰ってたのか」
「うん、久しぶり」

長期の任務でしばらくファミリーと別行動をしていたおれは、圧倒的グラディウス不足でとても疲れている。若様に報告を済ませたあとはすぐさま外出中のグラディウスの部屋に侵入し、ベッドの上に座ってグラディウスの帰宅を出迎えた。

「グラディウス、こっちおいで、こっちこっち」

太ももをぱんぱんと叩いて、ここに座れと示してみるが、もちろんその通りに行動するわけもなく「若への報告は済ませたのか」と素っ気ない返事をしてぐいぐいと肩を押してきた。これはおそらく『ベッドに座るな』という意味だろうが、勝手に部屋に入ったことについては責められないのだから最初に比べればだいぶ優しくなっている。思わずにやにやしてしまうおれに「何を笑っている」と頭を叩く手をとって、そのまま引き寄せてベッドの上に押し倒した。

「っナマエ!」
「若様への報告はもう済ませたし、今日はもう休んでいいって。グラディウス、おれ疲れちゃったよ〜いちゃいちゃしよ〜」
「疲れたなら、寝ろ!」
「寝るよりグラディウスといちゃいちゃしてた方が疲れ取れるし。ね、頑張ってきたおれにご褒美頂戴」
「若のために頑張るのは当然だ!」

「離せ!」という割に腕の中でもぞもぞと動く程度の抵抗は小さく、せいぜい身体を反転させておれに背中を向けるくらいだ。相も変わらず全身を覆う服はそのままに抱きすくめ、拒んでいるように見える背中に額を擦り付けると緊張するのが伝わってくる。無言のまま体重をかけてベッドマットが沈み込むくらいに押さえつければ、いよいよ抵抗らしい抵抗は止んだ。グラディウスの体温は火を付けたように熱くなり、ちらりと見える耳や額が真っ赤に染まっているのが見える。

「キスしたいな」

言っても振り向いてくれないのはわかっているので、シーツに顔をうずめるグラディウスはそのままに、抱きすくめている手で全身をまさぐっていく。腹から胸、脇腹、それから太ももの付け根。さすったり揉み込んだりする度に無言でびくびく震える様はエロくてたまらないのだが、硬くなってきたイチモツを尻に擦りつけると処女のように「ひっ」と小さく漏れた悲鳴が一番興奮を煽った。そのままセックスの真似事をするように腰を振っても、お互い着衣のままなのだから得られる刺激なんかたかが知れている。これはおれが気持ちよくなるための行為ではない。グラディウスをゆっくりと追い詰めていくための挑発なのだ。

「ぁ、ゃぁ、ぁ」

顎を掴んで振り向かせ、小さな、本当に微かな喘ぎを漏らすグラディウスの口にマスクの上からかぶりつく。それから体勢を変えて向かい合うようにグラディウスの身体をひっくり返しながら、無防備に放り出された脚を掴んで開き腹を割り込ませた。脱いでいればそのまま挿入出来そうな状態であるということに気付いて、ぶるりと震えたのは恐怖か興奮か、表情を覆うマスクからは窺うことができない。「ちゅーしよ」ともう一度マスク越しのキスをして、腹をグラディウスの股間にぐりぐりと押し当てる。悲鳴も喘ぎ声も、マスクと唇に塞がれてもう聞こえなかった。ただしっとりと衣服を湿らせる汗が、グラディウスの興奮を伝えてくる。

「暑そう。脱ぐ?脱いだら犯すけど」

体重をかけてのしかかったまま、硬い髪を撫でて汗ばむ額にくちづける。ゴーグルを通してきつい目つきで睨んでくるグラディウスは、矜持が高く忍耐強い男だ。けれどおれのしつこさはそれを凌ぐことを、グラディウスはもう知っている。

「グラディウス、な、いちゃいちゃしよ」

親が子に甘えるように擦り寄ったおれに、グラディウスは舌打ちをひとつ。それから伸びてきた手がおれの手を震えながら掴んで、コートのジッパーに導いた。脱がせて、とも素直に言えないかわいい恋人に癒されて、おれの疲れは瞬く間に吹っ飛んでいったのだった。

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