SSリクエスト祭3 | ナノ


なんでテメェみてェなガキが、と言われることは多々ある。インペルダウンLEVEL6、ここにいるのは大概がろくなもんじゃないクズだ。おれみたいな平凡な容姿で、突出した能力もなく、これといった特徴も見られない男が放り込まれるにしてはあまりにも分不相応の監獄である。

「おはよう、サー、今日もここは肌寒いね」

こんな日常会話ですら無視が通常、あるいは悪態をつかれ、そうでなくとも獄卒の機嫌が悪ければ言葉を発しただけでぼこぼこに殴られるっていうんだからたまらない。「おれは冤罪でこんなところに放り込まれたんだよ。大層な悪事が出来るタマだと思うのかい?このおれが?」ぐずぐず泣きながら容赦を乞うと、同じ空間に放り込まれているクロコダイルは鼻で笑い、他の囚人達もげらげらと笑って見下してくる。捕まった時も平然としていたクロコダイルからみればおれなんか、なんてバカな男だと思っているだろう。情けない男だとも。哀れんでは、くれないだろうな。同情するくらいなら殺して楽にしてくれるだろうし、殺す手間をかけるくらいなら誰かに殺させるよう差し向けるくらいに彼はおれに興味がない。その価値もないと知っている。おれもそう思う。おれは本当に、こんなところに放り込まれるようなタマではないのだ。どこにでもいる平凡な、強いて言うならちょっぴり偏食で、少し食い意地が張ってる程度の、矮小な存在だ。
これまで何度も訴えているというのに、獄卒も看守も決しておれを矮小な男だと認めてくれない。ならばせめて、クロコダイルみたいな大海賊と同じ檻に入れるのはやめてほしいと言うものだ。彼さえいなければ、少なくともおれはひっそりと一人で食事を楽しめるというのに、彼はおれに興味がないくせ、なんとも目ざとい男なのである。ひどい話だ。こんな地獄では食うことくらいしか楽しみがないっていうのに、ろくに食事もできないなんて。


「ああ、おなかすいたなあ」

ぐずぐずと泣きながら床に伏せて腹をさすると、先ほどおれの食事を奪った同室の輩が下品な声で笑ってしゃぶりつくした空の椀を投げつけてくる。いいんだ。別に。生かさず殺さずの臭くてまずい飯なんか食べていて悲しくなってしまうし、そんなものでは満たされないから、いいんだ。

おなかすいたなあ。おなかすいたなあ。おなかすいたなあ。おなかすいたなあ。
今日の夜は飯にありつけるだろうか。クロコダイルが来てからというもの、彼は人の気配に誰よりも敏感で、少し動くだけでも気づかれてしまうから困る。目ざとい男。目障りな男。彼のせいで、おれはゆっくり食事もできない。

歯ごたえのある筋肉。ギラギラした目玉。一日中でもしゃぶっていられそうな太い骨に、新鮮な内臓。この地獄にきたばかりのやつらはその直前までたらふく美味いものを食って栄養を蓄えてるっていうのに、早くしないとどんどんやせ衰えていってしまう。勿体無いことだ。はやくたべちゃわないといけないのに、クロコダイルが目ざとく気づいて動けない。


「おなかすいたなあ…」

はやくたべたいのになあ、わにのにく。


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