非番で暇を持て余していたので、たまにはボルサリーノを夕飯にでも誘おうかと彼の子電伝虫に連絡をしたが一切通じる気配がない。普通であれば忙しいのかと考えるだろうが、相手がボルサリーノだと十中八九電伝虫を持ち歩いていないのが原因だろう。
今日は遠征も入っていないはずだし、緊急の案件が発生しているのであればおれにも連絡がくるはずだ。彼くらいの立場になれば自己判断で定時に帰ることも出来るだろうし、まあ直接誘いに行っても断られる可能性は少ないだろうと私服のまま海軍本部に顔を出したおれを迎えたのはひどく臍を曲げたボルサリーノだった。
目の前には盗聴用の電伝虫。「なんかあったのか」と聞いても、「君こそ、非番なのにわざわざ何の用で本部まで来たんだァい〜?」と普段のゆったりした口調で、しかしどこか刺を含ませた口調で問い返された。どうやら自分に用事があるとは思っていないらしく、「今はわっし以外に誰もいないよォ〜」と、今度こそはっきり皮肉のような声色で突き放してくる。機嫌が悪いのかおれに対して何か怒っているのか。どちらにせよ原因が思い当たらないのでどうしようもない。「飯にでも誘うかと思ってきたんだが、都合悪いか?」と聞いたのは断られるのを覚悟してのことだが、ボルサリーノはサングラスの奥で目を丸くして、それから幼い仕草でぱちぱちと瞼を瞬かせた。
「……それなら、別にわざわざ来なくとも…」
「連絡しても繋がんなかったんだよ」
「そんなはずはァ〜…」
ちらりと目の前の電伝虫を見るが、それは盗聴用であることに気付いていないらしい。どうせ言ったところで改善されることはないので、おれは「で、飯行く?行かない?」とだけ問いかけた。
「………わっしも、誘おうと思ってたんだよォ」
たっぷりとした沈黙のあと、小さな声でイエスの返事。誘おうとしてくれてたのは嬉しいが、まあどうせ繋がらなかっただろうな。それ、盗聴用の電伝虫だから。
貴方は自分の実力を最大限に使って『電話をするかどうかで悩んでいるボルサリーノ』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください。
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