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「来い」と端的な言葉で手を掴まれたあの日からずっと、ニューゲートの船に乗っている。
彼が昔から家族を持ちたいと願っていることは知っていて、きっと彼なら自分の力で叶えられるだろうということはわかっていた。一緒に乗っていた船を下りるなら、そのときがお別れなのだろうと、漠然と感じていたのだ。寂しかったけれど、誰もかもがその場に留まっていられるわけではない。夢があるなら背中を押してやるべきだと、ついにきた別れの日に「元気で」と笑って手を振ったのは自分なりの餞別だった。振った手を掴まれて、そのまま攫われるとは思っていなかったけれど。



「随分と増えたなァ」

船にひしめく『息子』達を見ながら呟いた言葉は感慨だ。あの日ふたりぼっちだった空間が埋まっていくのは、ニューゲートの夢がひとつずつ叶えられていくようで達成感があった。誰よりも先にニューゲートのところにいたというだけで「ナマエさん」や「兄貴」と慕われるのはくすぐったいが、今やおれにとっても彼らは家族なのだ。大事にしたいと思う。愛しいと思う。それはあの日、ニューゲートがおれの手を取ってくれなければ芽生えなかった感情だ。

「…世話ァかけるな」
「うん?なんだ今更」

長い付き合いだというのに、今になってしおらしい言葉をかけてくるニューゲートに笑ってしまう。人数が増えることで、仕事が分担出来るようにもなったが、その分面倒を見てやらなくてはならないことも増えたのは確かだ。けれどそんなのは、ニューゲートと共に船出をしたときからわかっていた。「楽しいよ、こういうのも」。強くて頼もしい手を握り、軽く引っ張ると、ニューゲートもにやりと笑う。そうだ、嫌ならばあの日、ニューゲートの手を振り払えば良かった。握り返したのは自分の意思だ。後悔なんてするはずもない。

「ニューゲートの方こそ、今更放り出したりしないでくれよ」
「…テメェだけは、最後まで連れてくつもりだ」
「いいね、楽しい老後が過ごせそうだ」

家族に囲まれた素敵な未来に思いを馳せて笑っていると、大きな荷物を抱えてふらふらしていた息子の一人が情けない声を出す。「イチャイチャしてないで、手伝ってくださいよー!!」。うーん、こういう時は、やっぱりふたりぼっちが良かったかな、なんて。調子のいいこと。



ニューゲートにとって「手をつなぐ」ことは『君とならどこまでも行ける』という意味です。
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