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「すぐ目の前を歩いてたはずなのに、なんではぐれちゃうんだろ」

答えを求めているわけではない、独り言のような台詞にゾロは顔をしかめた。はぐれたくてはぐれたわけではない。自分の進む方向に、ナマエがいなかっただけだ。

「まさか数秒目を離した隙にいなくなってるとは思わなかった…ナミがおかんむりだ、早く帰ろう」

ふー、と吐いた溜息は呆れや叱責の意味ではなく、ゾロを探すために走り回って疲れたがための一息だ。うっすらと汗ばんだ額を手の甲で拭って、そのまま自然な仕草でゾロの手をとった。急な接触に「おい」と反応するが、「また迷子になられたら困る」と離されることはない。

「余所見はだめ、刀を抜くような厄介事も禁止」
「わかってる」
「わかってるなら、船に乗るまで大人しくこのままにしといて」

繋がれた熱い手と、逃がさないようにきつく絡んだ指、汗ばんだナマエの首筋。迷子の子供のような扱いは不服だが、触れられることが不満なわけではないのだ。むしろ、思い出してしまってたまらなくなる。そういえば、最後にヤったのはいつだったか。

「…ナマエ」
「な、むぐっ」

振り向いたナマエの唇に、押し付けるようにしてキスを落とす。目を見開いた顔はマヌケで、鼻で笑うと今度は完全に呆れの意味での溜息を吐かれた。こんなところで何をしてるんだ、と言いたいのだろう。仕方ない、したくなってしまったのだから。



ゾロにとって「手をつなぐ」ことは『キスできる距離』という意味です。
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