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船長は酔うと少し饒舌になる。航路の話、新しい賞金首の話、少し難しい医学の話。どうでもいいことも詳しく聞きたいこともぽろぽろとこぼすように話してくれるので、おれは船長と酒を飲むのが嫌いじゃない。決して明るい性格ではなく、相手を楽しませられるような機転もなく、口数も少ないというないない尽くしのおれが唯一船長の側にいられる時間だからだ。
酔って饒舌になった船長は、相手が話を聞いていてもいなくてもどうでもいいらしい。ただ自分の言いたいことを言って、飽きたら寝る。いつかの酒の席で偶然隣に座ったおれが、船長の話に水を差すわけでもなくただ相槌を打って最後には寝る船長の枕になったのがお気に召したようで、時折船長室での晩酌に誘われるようになったのは願ってもないことだった。
「特別だぞ」と悪どい顔で笑って高い酒を分けてくれる船長に、嬉しいと思うのは高い酒が飲めるからじゃない。憧れの船長を独り占めできるからだ。一緒に飲む回数が増えていくごとに、船長を知ることが出来るからだ。

「……ねみィ、寝る」

コラさん、の話をいつもよりずっとゆっくりとした口調で話し終えた船長は、力尽きたようにおれの方へと頭をぶつけて寄りかかった。至近距離の顔は、涙こそ溢れていないが泣きそうに見える。

「…辛かった?」

目元をなぞって、当時の気持ちを聞いた。もっと気の利いたことを言えればいいのに、船長の気持ちを思うと苦しくて当たり前のことしか聞けない。当たり前だろと言われてもおかしくはない凡庸な一言だ。
急に触れられて驚いた様子の船長は、おれを見上げ、そしてすぐに目を伏せてそっぽを向くと、「今は平気だ」と気丈な一言を最後におれへ体重を預けて寝てしまう。寝顔はあどけなく、肩へかかる重みが信頼されているようで嬉しい。『コラさん』の代わりにこの人を守れたら、どんなに誇らしいだろうか。身の程知らずにも親のような気持ちになったおれは、寝てる船長を抱き上げベッドへと運んだ。



<ローの甘え方>
おしゃべりになることがたまにで、構ってあげると照れてそっぽを向きます。
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