「はァ〜〜…かわいい…」
全長3mを超えるドフラミンゴさえも優に包み込む大きなテディベアは、もはやぬいぐるみというよりオブジェといっても間違いないだろう。どこで作らせたのかは知らないがベッド代わりにも出来そうなほど肌触りのいいそれをプレゼントしてきて、テディベアに抱きしめさせるような形でドフラミンゴを座らせたナマエは、我が恋人ながらいまいち趣味おかしい。どう見ても体格も性格も仕草や声でさえ可愛げなど欠片もないドフラミンゴに愛らしい装飾品や衣類、玩具などを与えてはかわいいかわいいと言って愛でるのだ。今もテディベアの腹にめりこむようにして包まれているドフラミンゴを眺めてかわいいかわいいと褒めちぎり、褒めるのに満足したら今度はのしかかってきて顔中にキスを降らせる。少女趣味でもあるのかと思えば、その股間はしっかりと反応しているので、ただ単純に趣味が悪く、美的感覚が狂っており、そして性的嗜好が歪んでいるだけなのだろう。
鰹節にかじりつく猫のように興奮してドフラミンゴに夢中になるナマエもそう悪くないと今までは許容してきたが、今日用意された、作るのに手間も金も掛かっていそうなこのテディベアを目にした時、ドフラミンゴの機嫌は急降下した。
「…気にくわねェ」
「ん?どうした、今日はご機嫌ななめか?」
ちゅっちゅと顔中にキスを降らせてくるナマエの唇から顔を背けると、本気で機嫌が悪いと察したナマエはドフラミンゴに覆いかぶさったまま顔を覗き込んでお伺いを立ててくる。どうした、なに怒ってる、今日はそんな気分じゃない?と甘ったるい声の囁きが、ドフラミンゴにしか向けられないことを知っている。他に対してかわいいと言うことも、興奮して股ぐらをいきり立たせることも、機嫌を伺って声を甘くすることもない。ドフラミンゴに心底惚れている今は。
「…言わなかったか?おれはテディベアは嫌いだ」
「そうだっけ?シュガーもくまのぬいぐるみの兵隊をよく引き連れているじゃないか」
「ありゃああいつの武器だろう、好きも嫌いもねェ」
「同じようなもんだろう」
「ちげェ」
「…わかった、わかったからそんなに臍を曲げないでくれ。やることやったらすぐ処分するから」
「……」
「睨むなよォ。高かったんだよォ。何もせずに捨てろなんて酷いこと言うなよォ」
「お前の頭の悪さに比べたら酷くもねェよ」
「ドフィの可愛さに勝てないだけだって」
嘘だ。ナマエは本当に頭がわるい。
いつか、そう遠くもない昔。形も色もこのテディベアとそっくりな小さいぬいぐるみが足元にすがりついて泣いてきたことも、すっかり忘れてしまっているのだから。
ドフラミンゴで「君は本当に何も知らないんだ」とかどうでしょう。
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