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ナマエはゼフが海賊だった頃に拾った子供だ。ガリガリのボロボロで手負いの獣のように警戒心が強かったが、買い出し途中のゼフの食材を盗もうとしたところを捕まえて飯を恵んでやったら呆気ないほど簡単に懐いたのだという。ただ懐いただけならばまだしも、人間不信を拗らせていたナマエはゼフが手ずから作った食事以外は食べられなくなってしまった。それが単なる好き嫌いや選り好みという問題ではなく、他の人間の食事では身体が受け付けずに吐いてしまうというのだから重傷だ。
バラティエが出来たばかりの頃、ガリガリのボロボロの姿の子供がゼフの姿を見つけるなり「ぜんぢょお、おながずぎまじだあああ」とぼろぼろ泣きながら開口一番空腹を訴えたのは、それまで栄養剤と水しか口にしてなかったナマエには仕方がないことだろう。
ナマエからゼフを取り上げたのも、ゼフの片足を無くしたのもほとんどサンジのせいだ。そのせいかサンジは、男で同じ年頃のナマエ相手にどうしても過保護になってしまう。ナマエはサンジを一度だって責めなかったものだから、それは贖罪からくる感情だったのかもしれない。

サンジもナマエも大人になって、バラティエのコックも増えて、まかないはゼフ以外の人間が作るようになっても、ナマエはゼフの作った食事しか受け付けない。腕に自信を持つようになって一度食べさせてみたが、目の前で吐かれたことは未だにサンジのトラウマだ。

「お前さァ、クソジジイの飯しか食べられねェって、不便じゃねェか。レディとデートも出来やしねェ」
「いいんだよ、おれはゼフさんを嫁にすればいいんだから」

気持ち悪い冗談言ってんじゃねェよと叱るよりも、それならまあいいかと思ってしまったサンジは、後日ナマエの机の引き出しにしまわれていたやたらと太いサイズのエンゲージリングを見てようやく違和感に気づいたのだった。

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