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センゴクより二回りほど年下の若い恋人は、真面目過ぎるのが玉に瑕と言われるほど誠実な男で、逆に言えば真面目過ぎる以外に欠点のない完璧な男だった。
老若男女引く手数多であろう彼が何故自分を選んだのかセンゴクには未だに理解出来ないけれど、その当の本人が「センゴクさんでなければ」と熱く愛を囁いてくれるので、彼の為にはもっと未来のある若い女性に目を向けさせなければならないと思いつつも愛されるままに身を委ねてしまっている。下手に遠ざけてしまうと、この真面目過ぎる恋人は自分に不徳があったのかと思い悩み、可哀想なほど憔悴してしまうのだ。センゴクとて彼を憎からず想っているのだから、そんな姿は見ていられないとその手を取ってしまった。

真面目過ぎる点を除けば欠点のない完璧な男は、会えば常にセンゴクを幸せな気分にしてくれる。真面目過ぎる点を除けば、の話だが。


「媚薬の入ったローションが塗られているものと、ぶつぶつが付いているもの、どちらがいいですか」

真面目くさった顔で2種類のコンドームをセンゴクに見せた男は、本当に「どちらがセンゴクの好みか」と聞きたいだけで、他意はない。おそらくは、マンネリを防ぐための新しい刺激を彼なりに真剣に考えた結果がこれなのだろう。
蛍光ピンクのパッケージと、極彩色のパッケージ。見ているだけで頭痛がしてきそうなほど自己主張の激しいそれは、彼の提示した選択肢によるとどうやら特殊な細工が施された避妊具のようだ。
別に今までの、平凡でシンプルなもので全く文句はなかったのだが、どうでもいいと、それぐらい自分で決めろと突っぱねてしまうと、彼はそれを照れや羞恥だと受け取らずに怒らせてしまったと思い込み、ひどいショックを受けてしまうのだからタチが悪い。

長い沈黙の末、静かにそっと並べられた2つのコンドームのうち片方を指差すと、「わかりました、じゃあ、これは二回目の時に使いましょう」と選ばれなかったものも選んだものと一緒にベッドサイドに置くのだから、センゴクは「それなら選ばせるな」と叫びそうな声を飲み込むのに必死だった。

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