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「美しい花だな。お前によく似合っている」

半身を水槽の中に預けて笑う魚人の男は、ブルックの左目に咲く紫色の花を指先で突いて揺らした。最近仲間になったばかりの彼は、自分と同じく『まっとうな人間でない』仲間によく構う。ブルック然り、チョッパー然り、フランキー然りだ。「この船はゲテモノばかりで安心するよな」とひどいことを平然とのたまう彼に悪意はない。ブルックがこうして原因の分からない奇病にかかっても、心配する素振りなく笑っているのは事を楽観視しているのかそもそも深く考えていないのか。
目玉のない眼窩から咲く花は抜いても新しいものが生え、そして蜜を蓄えるように日に日にブルックは甘い食べ物を欲するようになった。どれだけ食べても満足することが無くなってくると、いよいよこの肉のない体も文字通り骨まで栄養を吸い尽くされて死ぬのではないかという懸念さえ出てくる。
仲間の誰もが心配し、焦り、治療法を探し回る中で、この魚人の男だけは我関せずと言わんばかりに、感染るかどうかもわからない花を指先でつついて朗らかに笑っている。病気だと思ってはいないのかもしれない。彼の考えていることは、ブルックにもよくわからない。

「私が死んだら、あなた、泣いてくれますか。ナマエさん」

泣いてほしいわけではないけれど。ブルックがそう言うと、彼は一瞬だけ目を丸くして、幼子の不安を笑い飛ばすような朗らかな声で大笑いした。

「馬鹿を言うなよ黄泉の者!お前はもうとっくの昔に死んでいるじゃあないか!」
「…ええ、そうでしたね、そうでした。ヨホホホホ…」



ブルックは左目から紫色の花が咲く病気です。進行すると甘いものばかり食べたくなります。魚の涙が薬になります。
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