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「はじめまして」と笑って握手を求める海軍将校は、間違いなくコビーの幼馴染であった。
「お前は鈍臭くて弱虫でどうしようもないね」と辛辣なことを言うくせに、柔らかく緩む目元が好きだった。馬鹿な子ほど可愛いという感情なのかもしれないけれど、海の知識を懸命に蓄えるコビーを見て「えらいね」と褒めてくれるのが嬉しかった。海軍に入って悪い奴を取りしまりたいと夢を語っても、お前には無理だと否定しないのが救いだった。
いつか本当に海軍将校になれたら、彼を守ることが出来る男になれたら、堂々と彼に好意を伝えようと思っていたのに、あの日間違えて海賊船に乗ってしまって以来会うことすら出来なくなってしまった。

コビーは変わった。鈍臭くて弱虫でどうしようもない男ではない。海賊船から救われて、海軍に入り、英雄と呼ばれる男に師事を受けて、無理だ無理だと弱音ばかり吐く中身だけではなく外見も別人のように変わった。だから、彼が目の前のコビーをコビーとわからなくても無理はない。
「あの、ぼく、」と震える声で見上げるコビーを見て、彼は困ったように笑った。

「君みたいなオドオドして弱そうな奴、おれは嫌いだなァ」

さも迷惑だと言わんばかりの声に息が止まった。コビーとヘルメッポを自慢の部下として紹介してくれたガープが「なんじゃと!わしが鍛える奴に腰抜けはおらん!」とフォローしてくれているが、コビーにはどうにもその言葉を立証することが出来そうにはない。「挨拶もろくに出来ない海兵なんざ、頼りになりませんよ」。そのとおりだ。彼の言うとおり、コビーはまだまだ弱気で弱い。既に将校まで登りつめた彼に比べれば尚更だろう。

「すいません…初めまして」

頭を下げて、床を見つめる。顔を見せられずに俯いたコビーは、彼がどんな目でその頭を見下ろしているかはわからなかった。



『愛してる』とは言えないから、コビーは「初めまして」と口にする。
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