SSリクエスト祭 | ナノ


海だろうが山だろうが、賊なんてろくでもないものだ。おれだってもう少し裕福な家庭に生まれていたら悪事なんて働かず清く正しく生きていただろうし、今頃嫁でももらって子供を作って平和に暮らしていたはずだ。それをダダンのお頭に言うと「あんたみてェな生粋の悪人が何をいってんだい」と叱られるのだが、心外だ。おれは賊には厳しいが、一般人はもちろん、女子供には決して手を出さない節度ある悪人だっていうのに。

「山賊やめたら、ナマエは好きだ」
「そうかいルフィ。残念ながら山にいる限りおれァ山賊だよ」
「山賊やめてェってんなら、仕方ねェから将来おれの船に乗せてやってもいいぞ。それなら海賊だろ」
「ありがとうエース。良い話だがお頭に恩を返せねェうちは、ここを離れらんねェんだよなァ」
「義理堅いんだなァ!そういうとこおれは好きだぞ、ナマエ!」
「照れるなァサボ。お前は本当に素直でかわいいよ」
「おれも!おれもナマエ好き!」
「ふざけんなルフィてめェ山賊やめたらって話だろ!!」
「山賊だけど好きだ!!」
「はいはいサンキュールフィ。エースも、そう怒るなよ、な?」

嫁は未だにもらえないのに子供が一気に三人も出来た気分だ。エース、サボ、ルフィの三人がうちに住み着くようになってから独立していくまでの面倒を見ていたら、扱いづらいことこの上ないクソガキどもはかわいいことにおれにだけは懐いてくれた。三人の家に招待してくれたり、獲ってきた獲物を見せてくれたり、外を出ればどこに行くんだと絡まれたり。まあ悪い気はしない。むしろ、子供が出来たらこんな感じだろうかと未来の家庭に妄想がはかどるというものだ。嫁にするならマキノさんみたいな人がいいな。美人で気立てがよくて酒場の主人とか最高じゃないか。是非ともアプローチしたいのだが、マキノさんが来ると子供達に掛かりきりだしみんなのアイドルだしその隙を見計らって近づこうとすると今度は子供達に捕まって外に連れ出されるのでおれは未だに一度もマキノさんと話せたことがない。くやちい。

「はァ、嫁さんほしいなァ」

切実な願望が口から漏れ出てしまい、唐突な発言にエースとサボがギョッと目を剥く。無邪気なルフィは「嫁ってなんだ?宝か?」と聞くので、「そうだなァ、一生大事にするって意味じゃあ宝かな」と答えてやれば、「おれのことヨメサンにしてもいいぞ」と抱きついてくるので何ともかわいい。それを殴って引き剥がしたのがエースで、冷静に「男は嫁にはなれねェんだよルフィ」と窘めたのはサボだ。さすがお兄ちゃんズ。アホの子ルフィに一般常識を教えるのは大概この二人なので、おれは安心してルフィを甘やかせるというものだ。

「それじゃあルフィ、おれがジジイになっても嫁さんこなかったら、お前がなってくれよ」
「おう!いいぞ、任せろ」
「ちょっと待て、おい、ナマエ」
「大人なのに、何ふざけたこと言ってんだよ」
「ん?お前達もおれの嫁さんになってくれるか?」

よしよし嬉しいな一夫多妻か頑張って今のうちに金貯めとかねェとな!
怒られるのを前提に真面目なお兄ちゃんズをからかってみたら、二人は思いのほか真っ赤になって黙り込んでしまったので内心ちょっと引く。まあ子供の頃の結婚の約束なんて破られるもんだからヘーキだろ。あー、マキノさん結婚してくんねェかなー。

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