何度も何度も何度も、うんざりするほど同じ話を繰り返し聞かされておれが楽しいと思っているのならバルトロメオは本当にアホだ。いや、思っているんだろうから確実にアホである。
確かにおれだって、麦わらの一味の破天荒な行ないは冒険譚を聞いているみたいでわくわくして好きだ。海軍どころか政府や天竜人にまで喧嘩を売るなんて四皇のような大物だってそうそう聞いたこともないのに、まだ出てきたばかりのルーキーが次から次へと報復を恐れもせずに立ち向かっていく姿はおれ達若手のチンピラにとってはヒーローのようなものである。バルトロメオと気が合ったのだって最初はその話からだったし、ニュース・クーが新しい新聞を運んでくる度にまたあの問題児たちが何かやらかしてないかと探してしまう。
けれど、バルトロメオは異常だ。こいつみたいなやつのことを狂信者というんだろうなと納得してしまうほど、単なるファンだというには度が過ぎている。朝から晩まで考えているのは麦わらのルフィを中心とした彼らのことばかり。口を開けば布教活動のように「ルフィ先輩」「ルフィ先輩」「ルフィ先輩」「ルフィ先輩」。間近で見てきたかのように語る武勇伝は、聞いていて確かに楽しかったし、テンションも上がった。それがきっかけでバルトロメオの下についたようなもんだから、今更文句を言うつもりはない。けれど、思うくらいは許してほしい。正直、うざいと。
きっとバルトロメオは、麦わらの一味の行ないに賛同し、崇拝することを良しとする人間なら誰だっていいんだろう。それがどんな人間であろうと、麦わらの一味に敵対せず、むしろ力を貸したいと願うような人間であれば誰でも。おれがそうだ。
以前一度、「たまには他の話をしよう」と促したことがあるが、バルトロメオは「他にナマエが喜びそうな話なんておれァ出来ねェべ…」とうなだれたあと、結局麦わらの一味の話を再開されてブチギレなかったおれは優しい。おれとは麦わらの一味が間に挟まれなきゃ会話も出来ねェってか。アホか。もう飽きてんだよ察しろよアホ。アホロメオ。
「…本当に、麦わらのルフィは、すごいなァ」
「おお!いつか絶対!お力になるんだべ!な、ナマエ!」
だけど本当のアホは、こいつに嫌われるのが怖くてなにも言えないおれ自身だ。