SSリクエスト祭 | ナノ


殴るつもりではあったけれど当たるとは思わなくてびっくりしてしまった。
「なんでテメェがそんな顔してんだよ」と頬を赤く腫らせて不機嫌そうに言うけれど、不機嫌なだけで怒っているわけではない様子のナマエさんを見ておれは途端に悪いことをしたような気持ちになる。いや、絶対悪いことしてるのはナマエさんなんだけど、怒る気持ちがすっかり萎えてしまった。

ナマエさんは時々、姿を消すようにいなくなる。それは島に着いてログを消化している時だけで、以前までは女を買ってるんだろうと深く詮索したりしなかったけれど、ナマエさんを好きになってしまった今はダメだ。ナマエさんはおれのことが好きなくせに「女を好きになるならそれでいい」とおれを突き放すように言うけれど、おれはダメだ。おれのことが好きなら、おれだけを好きでいてほしい。
だから今日、ナマエさんの姿が見えないことに気付いてからおれはとても怒っていた。ベタベタと触ってくるくせにそれ以上先には進もうとしないくせ、溜まったら女を買うだなんて納得出来るはずもない。ましておれは、拒否なんてしたこともないのに。
何事もなかったかのような顔で船に戻ってきて、おれが先に寝ていたベッドに入ってきたナマエさんが妙に甘ったるい匂いをまとっているのに気付いた瞬間、おれは勢いよく起き上がってナマエさんの頬に一発拳を打ち込んでしまった。もちろん殴るつもりではあったけれど、当たるとは思わなかったのだ。平然とした顔でひょいと避けて、「なに怒ってんだよ」と悪びれもせずにやにやと嗤うと思っていた。

「…ごめん、痛かった?」
「いてーよ、なんだよ」
「…どこ行ってたんだよ」
「なんだ、寂しかったか?」
「ばか!尻さわんな!」
「ばかとはなんだ」
「どこ行ってたんだよ!」
「…野暮用だよ、ちょっとしたな」
「浮気者!」
「…はァ?」
「女買いに行ってたんだろ!」
「ちげーよ」
「女の匂いがする!」
「香水のことか?これはおれのだぞ」
「うそだ、いつもそんなキツいのつけてない」
「つけたくなる日だってある」
「うそだ、うわきもの」
「してねェよ」
「おれのことすきなくせに」
「そーだよ」
「だったら、おれのもんだろ、おれことだけ見ててよ、なァ、ナマエさん」
「…ふ、いいなそれ。もう一回言ってみ」
「おれのもんだろ」
「そのあとも」
「おれのことだけ見てて」
「もう一回」
「……からかってんだろ」
「な、シャンクス、もう一回」
「…浮気すんなっつってんの」
「してねェよ、ばァか」

甘ったるい声でにやにや笑って、キスをして、シャツの中に手を突っ込んできて。誤魔化されているとわかったはいたけれど、悪びれもしないナマエさんにこれ以上文句を言っても仕方ないのだと理解して、仕方なくおれは気持ちいいその手と唇を受け入れることにしたのだった。そのうち絶対、おれ以外じゃ勃たないようにしてやる。

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