SSリクエスト祭 | ナノ


いい歳していつまでも独り身でいると、周りからのお節介が定期的に差し入れされる。「あそこの家のお嬢さんがいい子なんだけど」「会ってみるだけでもどうだい?」とお決まりの台詞で見合いを勧められるのはナマエが今よりもう少し若かったころの話だ。「恨みを買いやすい職業ですから」と断り続けて結婚適齢期もとうに過ぎるとさすがに少なくはなったが、まるで無くなったというわけでもない。同じ海兵であるがゆえに嫁ぎ遅れた女性や、夫を亡くした女性など、割れ鍋に綴じ蓋とでもいうのだろうか、どこにでもそういった余り物をくっつけだがるお節介焼きというのは存在するものだ。

「あんたももう年なんだから、老後の暮らしを考えた方がいいんじゃないかい?」とまるでナマエが何も考えていないかのように決め付けて一枚の写真を持ってきたのはナマエもよく世話になっている食堂の老婆だ。3人の子供を育て上げ、旦那と一緒に食堂を切り盛りする彼女にとったら確かにナマエはいつまで経っても気楽にふらふらしている独身男に見えるのかもしれない。確かに、守るべきものに責任を持てないからと逃げているだけなのは分かっている。ナマエとて、結婚をまるで考えていなかったわけではないけれど、踏ん切りをつけられなかったから今があるのだ。まあ、そのおかげでドフラミンゴとも関係を持つことが出来たのだから、良かったとも思っているのだけれど。
仮にもドフラミンゴと恋人という関係を持っている以上、もちろん今は結婚する気など毛頭ない。心に決めた人がいると言ってもいいのだが、相手が相手だけに結婚も出来ない、紹介も出来ないのないないづくしで納得してもらえるほど世間が甘くないのは今までの経験で分かっている。どんな言い訳をしても「とりあえず会ってみなさい」と押し切られてしまった場合、会ってしまった方がいいと分かっているのはこれも経験だ。相手には悪いが、「この人とは結婚出来ない」と思わせてしまった方が上手くことが運ぶ。

なので、「とりあえず会うだけ会って断らせてくる」とドフラミンゴに電伝虫越しで報告したのは、万が一にも誤解が起きないようにという配慮半分、嫉妬してかわいく拗ねてくれるんじゃないかという期待半分の下心があったのだ。
しかしドフラミンゴはつまらなそうに「ふーん」と相槌を打っただけでその話を終わらせてしまうので、ナマエはほんのちょっぴり残念だった。その日は。


「駆け落ちしたらしい」
「なにが?」
「私のお見合い相手の女性」
「フッフッフ!そうかい!フらせる前にフられたってか!!」

至極楽しそうに笑っているドフラミンゴは、「かわいそうになァ、会う価値もねェってか」とナマエの膝の上でナマエの頭を撫でながらわざとらしく慰めてくる。これで確信した。ドフラミンゴの仕業だと。
相手の女性は海兵の夫を亡くした未亡人。ナマエと同じく半ば無理矢理食堂の老婆に見合いを勧められたようだから断らせるのも簡単だと踏んでいたのだが、ドフラミンゴに報告して二日後、唐突に男と姿を消したというのだからあまりにも不自然だ。決まった男がいたのなら見合いなど断ったって構わないのだし、逃げるように姿を消す必要もない。不審に思って探ってみても彼女の周囲の人間は「男に一目惚れして駆け落ちしたらしい」と伝聞ばかりで詳細を知らず、船を出したはずの港の人間も誰も行方を知らない。そしてドフラミンゴと会ってみれば、これだ。独占欲の強い男にしては、成り行きとはいえ見合いをしようとしたナマエに大して機嫌が良すぎる。わかりやすく殺したわけではないので、叱ったりも出来ない。本当に彼女が好いた男と幸せになるために逃げたのであれば、それは祝福すべき出来事だ。例え相手が海賊だったとしても、本当に幸せになるためであれば。それが本当なら。

「気になるか?大丈夫、忘れさせてやるよ、おれがな…」

囁くような声が耳にくすぐったい。ゆっくりと焦らすように脱がされた服に、ドフラミンゴがごまかそうとしているのか、それともただセックスをしたいだけなのか測りかねる。「ドフラミンゴ」と呼ぶ声は少しだけ責めるようになってしまったかもしれないけれど、ドフラミンゴは楽しそうに笑うだけで何も言わなかった。

    いやしかし、はて。
なにを不審に思っていたのだったか。どうしてドフラミンゴはこんなにも上機嫌なのだったか。ドフラミンゴの何を疑っていたのだったか。何かを忘れているような気がするが、なんだったか。なんだったか。なんだったか。

「フッフッフ、どうした?そんな間抜け面をして」
「いや…今何かを忘れているような気がして…まァいいか、セックスしよう」
「フッフッフッフッフ!!!」
「なんだかご機嫌だなァ、小鳥ちゃん」

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