「新入りビビらせてんじゃねぇよい」とマジなトーンで叱られて反省している。現在。
マルコが言うことはもっともである。無意識だから自分ではどうにもならないのだが、せっかく心を開いた末っ子に敵意を向けたらまた警戒心を抱かせてしまう。大事な家族に対してそれは良くないことだ。わかっている。わかっているが、
それにしても。
初めて直接話をした彼は、予想以上に好青年だった。自分に非があると認めたら、一度も話したことがない相手にすら謝罪を躊躇わない。 それに、勘もいい。睨まれていることには気付いても、相手がおれだとわかるのは白ひげの中でも隊長格と幾人かだけだ。妬んでも嫌われたくないという自分勝手極まりないおれは、気配を隠すのが無駄に上手くなったというのに。 彼はきっと抜きん出て成長するだろう。今は危なっかしいところがあるが、いずれは隊長にまでなるかもしれない。まだ若くて、誠実で、勘がよくて。なによりかえがたいのは、あの能力。
なんて妬ましい。
「…うわ、またカイロが負のオーラ出しまくってる」 「………サッチ」 「ん?どしたよ」
ふらふらと歩いていたら、いつの間にか食堂まで辿り着いていた。夕食までもう時間がない厨房では慌ただしくコック達が働いているが、呆れた笑顔でおれを迎えてくれたサッチは至ってのんびりとした様子でおれの声に耳を傾けてくれている。
「…お前のスープは、おれが一生温めたい」 「えっなにプロポーズ?」
じゃあよろしく、と軽いノリで差し出された大鍋を抱きかかえて、おれはみんなが来るまで食堂の隅にて待機。慌ただしく酷使されるコンロからあぶれた可哀相な鍋は、おれと一緒にいるのがお似合いだ。
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