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おれはおれを見てくれない奴が嫌い。目立ちたがりなわけではなくて、今まで先入観で誤解されることが多かったからだ。図体がでかくて目つきの悪いチンピラ顔っていうだけで、中身は引っ込み思案なおれは悲惨な人生を歩んできた。まともな友達は出来なかったし、悪い人には絡まれるし、その上海軍にさえ冤罪で捕まりそうになった。なにも悪いことなんてしてないのに孤立していたおれを、なんにも気にせず「いい奴だな」と言って仲間に誘ってくれたのはルフィ。顔が怖いと指摘はしても、避けたり突っかかってきたりしない仲間達。おれはおれの中身を見て、良いところも悪いところも思ったままに評価してくれるこの船の人達が大好き。

だから、先入観だけでおれを見て、きゃあきゃあ騒ぐこのニワトリ頭は、だいっきらい。


「なまえ先輩…!」
「鬱陶しいなあ、話しかけてくんなよ」

お前に先輩なんて呼ばれる筋合いない、と冷たく突き放しているのに、このニワトリ頭、バルトロメオというルフィのファンは、ルフィの仲間であるというだけの理由でおれの言葉に律儀に傷ついている。ルフィを慕うのは自由だ。おれにだってその気持ちは理解出来るし、あの男になら命を投げ出しても惜しくないと思っているからどんな無茶をやらかしても着いていくことが出来る。けれど、友達の友達は友達だと思えるわけではない。ゾロもナミも、ウソップやサンジ、チョッパーにフランキー、ロビン、ブルックだって、仲間になって、その人と成りを知ったから心を開くことが出来たのだ。バルトロメオが『ルフィの仲間』だからおれを慕っているというのなら、それはおれ自身を見ていないということだ。顔や噂だけで判断されるなんて、もうまっぴら。いっそのこと、彼が頭の中で作り上げているような『すごい人』なんかではないのだと突き放してみても、バルトロメオはおれが嫌な人間だと思わず、自分が何かして嫌われたんじゃないかとしょげるので途轍もなくいたたまれない。おれだって意地悪したいわけじゃないのだ。見た目はおれと同様、目つきも悪くてどう贔屓目に見てもチンピラ顔だし、服装は派手で、新聞で書かれていた記事によると『人食い』の二つ名の通り人を食ったような態度は決して善人とは言えない。けれど実際に会って話してみたバルトロメオは、素直で感動屋で単純なとてもイイ子だ。さすがルフィを好きになるだけのことはある。
おれだって慕われるのが嫌なわけではなし、仲良くなれるならたくさん話もしたい。仲間しか知らない、ルフィのすごいところも、教えられるだけ教えてあげたい。
だけどおれは、気に食わない。ルフィの仲間というだけで無条件にきらきらとした目を向けて、おれの中身をよく知りもしないで、尊敬しているという態度をするバルトロメオが、とても気に食わない。


「なんだかまるで、恋をしているみたいね」
「…ハッ?」

思わず素っ頓狂な声が出てしまった。おれの愚痴をひとしきり聞いて、うんうんと頷いていてくれたからロビンは気持ちを分かってくれているのかと思ったら、まるきり見当違いのことを言い出したものだから何の話かと一瞬わからなくなってしまう。

「だって、ニワトリ君に本当のあなたを見て欲しいってことでしょう?」
「…ちがうし。先入観で人を判断する奴がきらいなだけ」
「だったら、ちゃんと向き合えばいいのに」
「だって…」
「本当のあなたを知って、落胆されるのが怖いの?」
「…ちがうし」
「大丈夫、あなたはいい子よ。ニワトリ君が知ったらきっともっと好きになるわ」

からかってるだろ、子供扱いするなよ。言い返したいけれど、全部わかっているわとでも諭すように微笑むロビンに反論したところで丸め込まれるのはわかりきったことだ。でも、おれがバルトロメオに恋をしているだなんて、そんな突拍子もないことは絶対にありえない。なんてったって、おれが一番嫌いなタイプだ。直接会ったり喋ったりしたこともない他人を、噂や人伝の話だけで判断して、決め付けて、勝手に態度を変えるタイプ。どうせおれなんか、ルフィの仲間じゃなかったら見向きもしないくせに、雛の刷り込みみたいになまえ先輩なまえ先輩って、きらいだ。きらい。だいっきらい。

「…ふふ、ねェ、顔が真っ赤よ、なまえ」

だから、ちがうってば!!!

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