サカズキ長編 | ナノ


ボルサリーノは気付いている。カルデラはどうしてあんなにもサカズキを憎んでいるのかと様々な憶測が飛び交っているが、彼はサカズキの何を嫌っているというわけではない。サカズキやボルサリーノ、あるいは教官といった、突出した実力の持ち主全員を嫌っているのだ。
だからボルサリーノも、海軍入隊当初、サカズキと同じようにカルデラに絡まれたことがある。ちょっかいを出してきて、馬鹿にするようにげらげらと笑って。相手をすれば付け上がって一層楽しそうな笑い声を漏らすことに気付いたので、それからは頑ななまでに無視をして受け流せば、いつの間にかボルサリーノには関わらなくなっていた。
カルデラはただ単に、嫌がる顔が見たいだけなのだ。サカズキは受け流すということを知らず、向かってくるものには全力をもってして相手をしてしまうからカルデラを喜ばせてしまう。それでは彼を懲らしめるどころか、遊ばれてやっているようなものだ。おそらく並大抵の海賊では瞬殺してしまえるほどのサカズキが殺意を全開にして拳を振り上げようとも、カルデラが逃げに徹してしまえば致命傷を与えるには及ばないくらいに、彼もサカズキやボルサリーノと同様、他の海兵よりも突出している実力の持ち主だ。
最初に喧嘩を売って、買われてしまえば後は逃げてばかりだから、彼がどれだけ強いのかははわかりにくいかもしれないが、彼自身周囲の凡人とは一線を画する存在である。だというのに、実力者を目の敵にするのは妬みからなのか目障りだとでも思っているのか。まともに話そうとすると喧嘩を売ってくる彼の真意など確かめようもないが、サカズキも早く気付けばいいのだ。彼の挑発に乗ったところで、何の得もないのだと。巻き込まれたくないので、ボルサリーノは教えてはやらないけれど。


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