サカズキ長編 | ナノ


サカズキの制服がズタズタに切り裂かれていた。洗濯して外に干していた着替えや、大部屋に置いていた未使用の分まで全て。憎しみが写されたかのように執拗なほど切り刻まれていて、もはや着るどころか雑巾としても役には立たないだろう。サカズキとボルサリーノ、そして他の海兵たちがその惨状に気付いた時、頭に浮かんだ犯人はたった一人。普段からサカズキを嫌っていることを隠しもしない、カルデラの他に誰がいようか。

「貴様…ッなんのつもりじゃァ!!」
「………はっ?」

訓練の後、一足先に食堂でカレーを食べていたカルデラは、すっとぼけた面で怒り心頭のサカズキを見上げた。その鼻先に突き出したボロきれに首を傾げるのは、誰もがいつもの挑発だと思っている。目撃者がいない犯行に証拠は何もないが、カルデラ以外にこんな嫌がらせをする人間をサカズキは知らない。
なんのことかわからない、といった様子は、サカズキの神経を逆撫でするだけだった。それも計算のうちではあるのだろう。噴火する火山のように怒りを爆発させたサカズキに、カルデラの目はきらきらと輝き、げらげらと笑い出したところでやはり犯人はカルデラなのだと確信がつく。なんと性格の悪い男なのだろうか。海兵の風上にもおけない、最低な行為を平気で行って笑っている。やはりこの男はここで殺しておくべきなのだ。海賊のような気性の持ち主など、生かしておいたところでなんの価値もない。百害あって一利なしだ。

「今日こそ息の根止めちゃる!!」
「んはははははははははは!!やってみろよこのノロマがァ!!」

げらげら、ばきばき、がらがら。ひどい音を立てて壊れゆく食堂は、二人を止めにきた教官が辿り着く頃にはサカズキの制服同様、使いようがないくらいボロボロになってしまっていた。


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