サカズキ長編 | ナノ


「うえあああああん!!ボルサリーノが気持ちわるいいいいい!!」
「オー…そんなに震えて、可哀想にねェ〜…温かいミルクでも持ってきてやろうかァ〜?」
「なんなのお前そんなキャラじゃないだろお前!やめてソフトなタッチで背中を擦らないで怖い怖い怖い!!優しさが怖い!!離してえええ!!!」

全力で拒絶するカルデラの全身には鳥肌が立っていて、本気で嫌がっているのが見て取れる。彼は時折思い出したかのようにボルサリーノにもちょっかいを出してきて、鬱陶しいことこの上ないのでどうにかならないかと対策を考えていた。
そこに朗報が飛び込んできたのだ。今期の新兵の中に、カルデラの幼馴染みがいるらしいと。
なるほど、だからサカズキやボルサリーノと同じく実力が突出していると噂になっているクザンという新兵は、最初の1ヶ月ほどだけで彼から解放されていたのか。
ボルサリーノのように完璧に無視が出来るような性格ではない様子から、不自然だとは思っていたのだ。少し探りを入れてみれば簡単なこと、その幼馴染みとやらがクザンに入れ知恵をしたらしい。
それを聞いたボルサリーノは、光の速さでその幼馴染みを攫ってきて話を聞き出した。新兵だった自分達に後輩が出来るくらいの時間を過ごしても全く解らなかったカルデラの人となり。正体は簡単で、既に理解をしていたことだ。
カルデラは頭がおかしい。
どれだけ中身を覗いても、結局結論はそれだけだった。

「怖くなんてないだろォ?ほら、火傷ばっかりしてる君のために、よく効くっていう傷薬もらってきたんだからさ〜…」
「なにそれ!嘘だろ唐辛子でも入ってんだろ!?罠だって言って!塗らないで待って!うわあああ普通の薬だああああ」
「早く治るといいね〜」
「イヤァアアアアア!!!」

ボルサリーノには全く理解が出来ない。一般的に見て、ボルサリーノは今とても善意的な行為をしているはずだ。だのにカルデラは全力で嫌がって、ぶるぶると震えながら怖がっている。彼の頭の中は一体どういう構造で出来ているのやら。ボルサリーノは理解するつもりもないが、本気で怯えて恐怖に震えるカルデラは新鮮で悪くない。にっこり笑ったボルサリーノに、カルデラが一層悲鳴を上げた。「悪意はあるのに!殺意がない!なにこれこわい!!」。まるでこの世の終わりのような顔に、溜まっていた鬱憤がいくらか晴れる。
サカズキにも教えてやるべきだろうか。まずもって彼に、優しくするという行為が出来るかは甚だ疑問ではあるけれど。


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