え、カルデラですか?はい、昔から頭のおかしい男でしたよ。 何かのトラウマのせいで精神的に不安定になってしまったとか、頭を強く打ってからネジが抜けたように狂っただとか、そういった同情の余地がある原因などは何もなく、普通の父母から生まれて普通に愛されて育ったくせに物心つく頃には頭のおかしい男でした。まったく、親不孝な男ですよね。
カルデラが海軍に入隊した理由、聞いたことありますか?「酷いことはしたくないんだけど、危ないことはしたいんだよね」だそうです。ええ、それを聞いて海軍を勧めたのは私なんですけれども。万が一なにか仕出かしたとしても、海軍ならすぐに捕まえてくれるだろうと思いまして。 ああ、はい勿論、そうですね、サカズキ先輩には大変申し訳ないことをしたと思っています。「運命の人が現れた!」なんてトチ狂ったことを電伝虫で話すものですから、とうとう現実と夢の区別もつかなくなったのかと心配して私も海軍に入隊してみればアレですから。どちらかといえばサカズキ先輩の胃の方が心配になりましたが、心身ともに頑丈な方のようで何よりです。まあ、だからこそあんなに絡まれるはめになっているんですけどね。
カルデラが死ぬ?ふふ、殺すつもりで向かってきてくれるだなんて、それこそカルデラの望み通りですよ。言ったでしょう、昔から頭のおかしい男なんです。 幼い頃は町のガキ大将を相手に反発して不興を買う程度で満足していたようなんですが、成長するにつれてそれなりに彼も強くもなりましたから、欲が出てきたようでして。町を牛耳るチンピラ、町を侵しにやってきた海賊、町の周囲を住みかにする海王類と、徐々に範囲を広げて普通ならば関わりたくもない相手に喧嘩を売っては、命の危険を味わっていましたよ。結局生まれ育った故郷だけでは満足出来なくなったようでして、海に出ることを強く望むようになったんです。まあ、目的のために手段は選ばないだけで性根はいい男ですからね、心配じゃないですか。放置して賊にでもなられたら世間の皆様に申し訳が立たないですし。だから海軍を勧めたんですよ。強い海賊の討伐にでも放り込んでくだされば、少なくとも一般市民の益にはなるでしょう。目をつけられた方々には、もう諦めてくださいとしか言いようがないですね。 あ、でも、そうそう、あんまりにも腹が立ったら、とびきり優しくしてやるか、戦場でなら助けてやると良いですよ。スリルがないとあの男、薬が切れたヤク中みたいにがたがた震えて泣き喚きますから。平穏が怖いなんて、本当に頭のおかしい男ですよね。
………おやおや、ボルサリーノ先輩たら、悪い顔をしてらっしゃる。 ふふふ、程々にしてあげてくださいね、あれでも一応、私にとっては大切な友人ですから。
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