カク長編 | ナノ


すやすやと眠っているマルの寝顔を見つめて、カクは深い溜め息を吐いた。
時刻は深夜の1時。夜が来ないこの島は未だ煌々と明るく、遮光カーテンの隙間から漏れる光が部屋の中をうっすらと照らしている。マルは暗殺者とは思えないほど平和な顔付きでベッドに沈み込んで惰眠を貪っていた。それは構わない。何か約束をしたわけでも仕事があるわけでもなし、暇な時間をどう過ごそうとも構わないのだが、問題はカクがこんなに近づいても起きる気配がないことだ。

マルは昔から寝起きが悪くて、ちょっとやそっとではめったに目を覚まさない。無理矢理起こせばそれはそれは機嫌が悪くなってしまい、普段の親しみやすい雰囲気が嘘のようにギスギスとした空気をまとうのだ。
だから使用人は勿論、CP9のメンバーですらマルの寝起きは関わらないようにしている。それでも何か急務が出来てマルを起こす必要が出来た時は、いつもカクに御鉢が回ってくるのだった。
とはいえ、カクはそれが嫌だというわけではない。おはようからおやすみまでマルを見つめることはもはやルーチンワークの域にも達しているし、マルとていくら機嫌を悪くしていようと、目の前の人間がカクだとわかれば攻撃をしてくることもないのだ。だから別に起こすことには異論はないのだけれど。
問題は、マルが寝ている最中の話だ。

マルはちょっとやそっとのことでは目を覚まさない。誰が部屋に侵入して来ようが、すやすやと呑気に眠っている。それは暗殺者としていかがなものか。正体を隠して一般市民に紛れるCP9が命を狙われるようになった時、それはつまり任務が失敗していることを示す。マルがそんな失敗をしでかさないとはわかっているが、カクは心配になってしまう。
頬をつついても、キスをしても、刀を首筋にあてがっても、マルはちっとも目を覚まさない。これでは万が一、億が一にも寝首をかかれるような事態に陥った際、マルは抗いようもなくあっさり殺されてしまうではないか。

はー、やれやれ、どっこいしょ。カクは深く溜め息を吐きながら、靴を脱ぎ捨ててベッドの中に潜り込んだ。別に、一緒に寝たいというわけではないのだけれど。
寝汚いマルの睡眠中の安全を守ってやれるのはカクしかいないのだから、これは仕方ないことなのだ。そう弁明すればマルだって、いつも笑って頷く。「あーそうなの?守ってくれてんの?ありがとカクちゃん、愛してるよー」。
つまり、カクがマルと一緒に寝るのは義務なのだ。異論など認めぬ。

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