同じものを食べて同じ目標を抱えて同じように鍛えてきたというのに、成長するに連れてマルとカクはまるで違うものになってしまった。話し方も考え方もまるで違う。好きなもの、嫌いなもの、興味を持つもの、つまらないと思うもの。一緒にいればいるほど浮き彫りになっていく差異が、カクには疎ましくて仕方がなかった。
「いっそのことお前を頭からバリバリ食うてやろうかと思っとる」
「あらやだカクちゃんマジ肉食系」
「腹ん中に収まれば全部ワシのもんじゃ」
「その後うんこで出るけどね」
「おう…盲点じゃった」
「カクちゃんたらうっかりさーん!そんなところも愛してるよ!」
「ワシもじゃァ」
「そんなことより飯食いいこーぜ!」
「肉がええのう」
「おれ今日は魚の気分ー」
マルは嘘でもカクに合わせない。遠回しに食ってもいいと言われているのだろうかと肩口に噛み付いてみたが、「カクちゃんそんなにお腹すいたのー?」とのんびり笑っているだけで噛まれるがままになっている。冗談だと思っているんだろうか。本気を示すために顎に力を込めても、マルの肩はちぎれない。
「…案外ヒトの体っちゅうんは固いのう」
「そうだねー、鉄塊なんてしなくてもねー」
「肉食獣の強靭な顎が欲しいわい」
「そーねー」
聞いているのか聞いていないのか、マルは口を離したカクを置いてさっさと食堂へ向かってしまう。指銃で心臓を貫いて、嵐脚でバラバラにして、鍋で煮込んで柔らかくして。食べてしまうことは簡単なのに、どうしてこうも彼は無防備でいられるのだろう。ひとつになりたいと、彼も願っていてくれたら。それだけはカクとおんなじだ。