モモンガ長編 | ナノ


まさかとは思っていたが、彼は本当にモモンガを好いているらしい。上官や人としてではなく、恋愛対象としての『好き』だ。にわかには信じがたい事実に、だめだと言えなかったモモンガは頭を抱えた。これはよくない。いいわけがないだろう。彼はまだ年若く、純粋で洗脳されやすい年頃だ。大方、モモンガに懐く様子を見た誰かに「君は本当にモモンガ中将が大好きなんだね」とでも言われているうち、尊敬の感情を恋愛と履き違えてしまったに違いない。相手が中年の男、まして美人でも女性的でもない時点で恋愛対象ではないと気付くものだろうが、気付かないのが彼の彼たる所以だろうか。軍人としては致命的なほど騙されやすいのだ。いつもモモンガは注意していたはずなのだが、最終的には甘やかしてしまっていたせいか中々直らなかった。よもやこんな形で、しっぺ返しが来ようとは。モモンガには思いもよらない。


    いいか、つまりお前は、感情の区別がついていないんだ」
「えー…」

なあなあで恋人関係になってしまう前に、モモンガはもう一度話し合うことにした。許しを誘うあの表情を見ないよう、視線は逸らして腕を組み、なおざりは断固許さない構えである。

「お前は男が好きなわけではないんだろう」
「はい…どちらかといえば女の子が好きです…」
「そうか、この部署は男ばかりでさぞ辛かろうな」
「でも中将がいれば、おれ…」
「だから!それが勘違いだというのだ!」

「かんちがい」。ぽつりとオウム返しに呟いたロットに、モモンガは頷く。まさか自分に愛を説く日が来るとは思わなかったが、照れ臭さを押し殺して懇懇とロットに言い聞かせた。
恋愛と尊敬は違う、過酷な環境から救いを得ようと、お前は自分を騙しているだけだ。きっと近い将来、後悔をする。
しばらくはモモンガの言葉を静かに聞いていたロットだが、「でも」と殊のほか強い口調で割り込むと、逸らしていたモモンガの目を覗き込んだ。

「おれ、中将に勃ちますよ」

真摯な瞳で告げられた情報に、いよいよモモンガは目眩がした。


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