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「病気するとさ、別れる夫婦って多いらしいよ」とすっきりしたように笑う、かつての同期。
「彼女はいい女だったけど、おれが求める『奥さん』ではなかったし、おれも彼女が求める『旦那』ではいられなかった、って話」
大病にかかったと人づてに聞いて、今更何が変わるとは思わなかったけれど
毎日病室に顔を出した。お互いいつ死ぬか分からないような職業だっていうのに、戦場以外で死ぬかもしれないと聞くと焦ってしまうのは何故なんだろうか。顔を見ずにはいられなかった。会いたいのは自分本位の感情だ。彼を気遣ってのことではなかったけれど、思った以上に喜んでくれたから、
彼の結婚式の日に捨てたはずの感情が図々しくも顔を出す。
「まさかクザンが毎日来てくれるなんて思わなかった。嬉しいよ。入院ってさ、退屈だからさ…」
一日五分。その程度の見舞い。それも出来ない女なら、おれでも良かったんじゃないの。おれにしとけば、いいんじゃないの。





記憶喪失になって仕事のことも友達のことも家族のことも忘れて、恋人だっていうボルサリーノさんのお家にお世話になってる。年上だし男だし自分とタイプ全然違うし、どうやって付き合ったのかわからないけど、甲斐甲斐しくお世話してくれる恋人は確かに魅力的でそういうとこが好きになったんだと思う。
「無理して思い出さなくてもいいよォ、一からやり直そう」
優しい言葉に安心して、焦りはなくなった。
一から手を繋いで抱きしめあってキスをして。ベッドの上で狭い穴にねじ込んだ瞬間、運命なんだろうか、全部思い出した。仕事のこと。友達のこと。恋人のこと。

それで?なあ、誰なんだ、こいつ。





弱ってる時に人恋しくなっちゃうクラッカーくんは、「風邪ひいたから近寄らないでね」って言うカレピの『弱ってる時は放っておいてほしい』という気持ちに気付かない。普段全然なにもしないのにここぞとばかりにめっちゃ世話焼く。愛。愛?



遠くに任務に行かせてた男が花吐き病を患って帰ってきて、「お前が恋なんてか可愛らしいもんを患ってるとはな」って驚くみんごちゃん。恋どころか人間にも興味なさそうな男だったもんで、「はァ、そっすね。初恋こじらせてんすよ」ってサラッと熱烈なこと言われて更に驚く。一応薬で症状を抑えるとか、
なんならシュガーに頼んでその初恋の君を消してもいいとか提案するけど、結局完治は両思いになるしかないから「フッフッフ、告白はしたのか?まだなら口説き落としてみればいいじゃねェか」って言うんだけど「いやァ、望み無いですし、いいんすよ、このまま窒息で死んでも、好きな人に殺されたみたいで
ロマンチックじゃないすか」とかテメー普段のリアリストっぷりどこで落としてきたんだってくらい夢見がちな事いうし、お前の命をおれの断りもなく勝手に消費させてんじゃねェぞって思うみんごちゃん。自分のものが他にとられるのが嫌なみんごちゃん。そしてそのことは重々承知の花吐きリアリストマン。





「病気だって聞いた時からさ、覚悟は出来てたよ。まさか処刑を選ぶとは思わなかったけど」って苦笑いでロジャーの死を見送った元クルーが一度も涙を流さず悲しみも言葉にせず過ごしていたのに、ルフィとレイリーが並んでいるところを見て号泣して、「ロジャーはもういないんだな」って
今更な喪失感に耐える話。ロジャー以外の男の面倒を見るレイリーに、何よりも喪失を思い知らされた話。





同期の男が余命幾ばくかの病気を宣告されて、なんでどうしておれがいやだまだ死にたくないって散々取り乱してたのに、最近は静かになって身辺整理を始め、海軍も辞めてしまって死ぬ準備をしているのでめちゃくちゃ焦るロシナンテ。死にたくないって言ってたのに、まだやりたいことたくさんあるって
言ってたのに、って思うけど「よく考えたら、海兵もいつ死ぬか分からないよな」って笑う男の、死を受け入れてる姿が怖い。
「死にたくないって言ってくれ」って言うのは、治らない病気に抗ってくれと、酷な事を言っているのはわかってるけど、受け入れたらもう万に一つの奇跡も起きない気がして怖い。
「そりゃさ、死にたくないよ」
「死なないでくれ」
「ありがとう」
「死にたくない、って言ってくれ」
「…うん、死にたくないよ」
「死なないで…」
「…ロシナンテは、長生きしろよ。色んなもの見て、好きな事して、幸せになって、満足したら、家族に看取られて死ぬんだぞ。土産話、待ってるから…」
っていうのが最後の会話。
時折ふと思い出して、目の前の兄を見て、死の間際まで追い詰められてなお全力で抗える人間は少ないんだなとしみじみ思う『コラソン』の話。




誰にも言ってないけど、余命半年だからやり残したこと全部やろうと思ってサンジくんに告白したら案外受け入れられちゃって、「毎日ちゅーしたい」「いっぱいお話しよ」「一緒に料理してみたかったんだよね」「触ってもいい?」ってどんどん要求すると渋々って感じだけど真っ赤な顔で受け入れられて、
ああ幸せ、死にたくないけど、最期がこれなら悪くないって思ってたら引き出しから遺書を見つけたサンジくんに病気のこと知られちゃって、全員大騒ぎ。泣かれるし怒られるし強制的に色々検査。病気になったのは船に乗る前だったし、治らないことは知っていたし、酷い環境から救ってくれた仲間に暗い影を
落としたくなかった。「短い間だけど、今までで一番幸せだった。こんな死に方なら悪くない」って笑う男に、しかし検査結果は健康の二文字。あれェ???って首を傾げる男。前に住んでた所の医者の診断書もあるし、実際に身体もしんどかった。嘘や思い込みじゃない。なんで???
「もしかしたらだけど、今までのストレスがなくなって、適度な休養と運動、栄養ある食事で免疫力が上がって治ったのかも…?」って仮説を立てるドクターは、再発の可能性もあるからまだ油断は出来ないこと、これまで通り休養運動食事はしっかりとること、あとはたくさん笑ったりするのもいいぞ!って
診断をしてとりあえずその場は解散。それ以来みんな気遣ってくれるけど、肝心のサンジくんは不機嫌なまま。チョッパーの診断が本当なら、美味しくて栄養ある食事を作ってくれて、いっぱい幸せな気分にしてくれたサンジくんがほとんど病気を治してくれたようなものだよなってお礼が言いたい。でも今まで
どうせ死ぬからって勢いでぐいぐい迫れてたので、不機嫌オーラ全開のサンジくんに近付く勇気がない。なんとなく近寄りがたくてしょんぼりしてたら、1日と経たないうちに焦った様子のサンジくんに捕まって「お前、鬱陶しいくらい近寄ってきてたくせに」「おれのこと好きなんだろ」「あんだけ飯食って、
遊び回って、へらへらしてたから、治ったんだろ」「やめたらまた病気になるかもしれないんだろ」「クソ野郎、死ぬなよ、死んだら許さねェ」って言って、キスが免疫力をあげるって本で読んだサンジくんがいっぱいちゅっちゅしてくれるので、絶対に長生きしようって思った。幸せは一番の特効薬。





「病気に殺されるくらいならおれがオヤジを殺しておれも死ぬ」って出来もしないくせに大泣きしながら話す男に、『おれのために生きちゃくれねェかい』って言おうとして口をつぐんで「お前が死んだらオヤジが悲しむよい」って宥めたら益々泣く男をずっと慰めてあげてたマルコは誰にも慰めてもらえない。



酔った時にいつも「おれの病気はキャプテンにも治せないと思うな」ってふざけたこと抜かすクルーに「バカは死んでも治らねェからな」って返してたんだけど実際に苦しそうな仕草を見て、おいまさか本当に病気なのか診せてみろって言うんだけど「治んないよ」って諦めたように笑うのが腹立って細切れに
して全部検査するんだけど何も悪いとこなんかなくて「おい、どこが悪いんだ」「悪ふざけなら殺すぞ」って問い質した結果『恋の病』って本当にふざけた病名だったから怒ってぼこぼこにしたけどその日から自分も苦しくなるようになってしまったから、伝染病なんて聞いてねェぞって頭を抱える外科医さん。


2019/05/23

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