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エースはナマエのような男を、どこかの島のどこかの国の軍隊の中に見たことがある。逆に言えば、どこかの島のどこかの国の軍隊の中でしか見たことがない。
ナマエは海賊というよりも、軍人のような男だった。背は高くてがたいがいいくせ、口数少なで表情もあまり変わらず、威圧感があるので新入りには怖がられている。
不器用で優しい嘘がつけなくて喧嘩もよくするけど、その分信頼が厚くて相談事をよく受けている。ふざけたり茶化したりしない。だけどノリも悪い。結婚するならあんな真面目な人がいいけど、恋人としては物足りないわ、とナースからよく言われている。

エースが知っているナマエはそんな男だ。誰に聞いても多分同じ。誰にも態度は変えないし変えられない。真面目で愚直で不器用な人。だからエースは、ナマエが好きだった。



***



良いか悪いかで言えば悪い方の人間であることをナマエは自覚していた。悪いと言っても犯罪者という意味ではない。不良品という意味の悪い人間だ。

一番それを自覚するのは、まともでない感性を思い知る時だった。誰にも言ったことはないが、裸の女を見ても何も反応することはなく、その代わりに燃えて朽ちゆく船や家屋を見るとひどく興奮してしまうのだ。
奇妙な性癖に困惑し、それでも火を見るたびに誤魔化しようのない欲がわいてくれば諦めて受け入れるしかないだろう。自分の欲のために所構わず火を点けて回るほど良心に欠けるわけではなかったが、生まれ育った村でも真面目で堅実な男だと言われていたナマエがある日突然海を出た理由は察して頂きたい。我慢が出来なかったのだ。海賊ならば船を燃やして殺してもいいだろうと、そんな身勝手な理由で漂流していたなど、ナマエを真面目で信頼できる人物だと思ってくれている白ひげの兄弟にも偉大なるオヤジにも言えるはずがない。

海賊として生きるうち、炎に包まれて朽ちゆくものを眺める機会は何度かあった。ひどく興奮して、感情を抑え込むのにどれだけ苦労したことか。かといってそれで満足出来ているかといえば年々ひどくなっていくというのだから我ながら救いようのない不良品だ。

船や家屋だけでは我慢が出来ない。森や動物でも物足りない。
もっと自分にとって大事で、替えのきかない、愛した人を燃やしたい。

自分が最低な人間だと、ナマエはわかっていた。


***


っていうお互いのモノローグから始まる両片想い話。エースは真面目で堅物な主人公が好きだけど、賑やかでいい加減なおれは好いてはもらえないだろうなと思ってるし、主人公は真面目で堅物だけど燃えてるものに興奮するという性癖を抱え、炎人間のエースくんと運命の邂逅を果たすけどこんな理由で人を好きになってはいけないと思って鉄の理性で抑え込んでる。多分最終的に主人公はマグマに焼かれて死ぬ。

2018/05/30

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