※ルッチさんに豹耳と尻尾が生えたまま戻せなくなったよ!
どうしてそうなったの、と聞かれてもわからないが、そんなのおれのところにきたってどうにも出来ないよ、と言われたら、そんなことは重々承知である。たかが庭師にどうにかしてもらおうなどとは端から思っていない。ルッチは舌打ちをひとつした。
頭から生えた丸い耳とズボンから窮屈そうにはみ出た長い尻尾。触ってくる手は遠慮がなくて、いつものように気持ちがいいからこそ叩き落とした。今はそれどころじゃない。能力を使用していないというのに、豹の耳と尻尾がまるで引っ込まないのだ。そのまま出歩くわけにも豹のままでいるわけいかず、とりあえず普段から人が寄り付かない彼の部屋まで避難しにきた。ジャブラあたりに知られたらここぞとばかりに馬鹿にされるのだろう。想像しただけで殺したくなる。ルッチはもう一度舌打ちをした。
「…かわいいからいいと思うんだけどなァ」
「お前の意見など聞いていない」
「ふーん…」
「…なんだ」
何か含みのある視線で見られて、ただでさえ苛々しているルッチは鋭い声で問い質した。彼は怯えた様子もなく笑う。
「いや、この状態だとミケの部分とルッチのどっちを愛せばいいんだろうと思ったんだけど」
「……なに?」
「どっちも愛してるから、問題なかった」
彼の会話は脈絡がない。人と会話をした経験が少ないからだ。ルッチはどんな返しをすれば正解なのかもわからず、ただもやもやとして、とりあえずは丸く切り揃えられた爪で彼の頬を引っ掻いてやった。
※自室に篭っときゃいいのにわざわざ避難しにくる理由を自分でもわかってないルッチさん
※不測の事態に不安になったのかなァ、と思うけどどうせ否定されるだろうから何も言わない庭師
2012/02/22