授業は退屈だ。ハゲたおっさん教師が熱く語る数学とか、もう退屈すぎて死ぬ。ああ声でかいしうるさい。ちらりと時計を見れば授業終了の2分前。よし、後もうちょい、もうちょいで授業が終わる…っ!必死に時計の針とにらめっこを続け、しばらく待てばカチッ、時計の針と同時に授業終了のチャイムが鳴り響いた。その音を合図に私は購買へと走り出す。目指すは1日10個しか売られない限定メロンパン。なんとふわふわ生地の中にカスタードが入ってるという豪華なメロンパンである。この学校に通う誰もが一度は食べたいと思う代物だが、競争倍率があまりにも高すぎるためなかなか手に入らない。こんなに必死に走ってる私ですらたまにしか食べたことがない。でも今日は絶対にそのメロンパンが食べたいのだ、どうしても。長い長い廊下を息を切らしながら走り、目的である購買まで後少し。もうすぐ、


「「メロンパン下さい!」」


…あれ?恐る恐る横を向けば私よりちょっと背が低い男の子。こいつ、二組の神崎だ。一組にも噂は届いている、二組の迷子と保護者。ちなみに神崎は迷子の方だ。方向音痴のこいつが何でよりにもよってメロンパンを買いに購買にいるんだ。何て見てたら購買のおばちゃんが困った顔で私たちを見ていた。まさかまさかまさか…。


「ごめんねぇ、今日はメロンパンもう売り切れなのよ」
「そ、そんなあ…」


がくっ、気が抜けたようにその場に崩れ落ちる。今日は、今日だけは、あのメロンパンが食べたかった。いつも食べられなかったから今日くらいは奇跡が起きてもいいんじゃないかって勝手に心の中で思ってた。けど現実は甘くないのね…。一気に重くなった足を無理矢理立ち上がらせ、私はふらふらとその場から立ち去った。一回教室に戻って朝買ったカロリーメイトとコーヒー牛乳を持ち、気が向くままに屋上へと向う。屋上には誰も居ない、私独りだけ。


「あーあ、購買で他のパン買えば良かったなあ」


カロリーメイトをかじりながらぼやく。あの時はメロンパンしか頭になかったからすっかりお昼のことを忘れてた。どうしよう、こんなんじゃ午後の授業持つ気がしない…。やっぱり戻って買いに行こうかな、なんて迷ってたらガチャ、誰かが屋上のドアを開ける音がした。ドアに視線を向ければそこにはさっき一緒にメロンパンを買い損ねた神崎。なんだ、また迷子か?けど私の予想は外れた。神崎は私を見るなり、見つけた!と言いながらこちらへとやって来たのだ。


「探したぞ苗字!」
「何で私の名前知って…っ」
「何でって知ってるから!」
「いや、確かにそうだけどさ」


意味が分からない。何でこいつは私を当たり前のように知っているのだろう?だってさっき購買で対面したばかりで、別に話してもいないし、名前を教えた覚えもない。うーん…考えれば考えるほど謎だ。


「そ、それより、どうして私を捜して?」
「これを届けに来た!」
「これ…焼きそばパン」
「今日誕生日なんだろ?悪いが、焼きそばパンで我慢してくれ!」
「何で神崎が私の誕生日を?」
「一組の後ろの黒板に書いてあったから」


確かに今日の一組の後ろの黒板には私の誕生日を祝うメッセージやらなんやらがたくさん書かれてある。その中にはメロンパン買えるといいね、とも書いてあった。でもだからと言って神崎が私の誕生日を祝うというのはおかしいと思う。今日の今日まで私たちは他人だった。だから祝われる理由も何も無いのだ。


「私、神崎に祝ってもらえるようなこと何もしてない」
「細かいことは気にするな」
「気にするよ!」
「うーん…僕がお前のことを好きだからじゃ駄目か?」
「え、」


照れ臭そうにそう告げた神崎に私は目を丸くする。しばらくすれば顔に熱が集中するのが分かった。もしかしてこれは告白なのか?それとも友達って意味で?私の頭は混乱してまともに動いてはくれない。あぁ、駄目。私は完全に神崎に落ちたみたい。
















人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -