「名前、私と夫婦になろう!」
「…は?」


いきなり見ず知らずの人に婚約を申し込まれた。何のつもりかは知らないけど、ふざけるのも大概にしてほしいものだ。


「誰ですか貴方、いい加減にしないと人呼びますよ?」
「おっと、これは失礼。私はこの学園の講師をしている山田伝蔵の息子、利吉と申します」
「え、息子?」
「はい」


あの醜い女装をすると有名な山田先生の息子とは驚いた。かと言ってさっきの発言が帳消しになるわけがない。


「山田先生の息子は相当頭が可哀想な人みたいですね」
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてない褒めてない」
「とりあえず今から父上達にご報告しに行きましょう!」
「なんでそうなるの」


ダメだ、全然話が噛み合わない。一体何なんだこの人は。少なくとも頭が可哀想な人という事は分かった。けど、何故いきなり夫婦になるんだ?


「利吉さん、でしたっけ?」
「さんは入りませんよ」
「そうですか。あの、疑問なのですが私達さっき出会ったばかりですよね?」
「そうですね」
「出会って数十秒で婚約を申し込むのは通常ではありえない話だと思うのですが」
「愛に時間は関係ありません!」
「いや、そうだけど。まず順序ってものを考えようよ」
「名前は私の事が嫌いなのですか?」
「だから、何でそういう話になるの」
「好きか嫌いかはっきりしてくださいっ!」


利吉に言い詰め寄られ言葉を返せなくなった私。ってかはっきりしてくださいと言われても困るんですが。


「正直に言います」
「はい」
「嫌いです」
「え?」
「嫌いです」
「すいません、何も聞こえません」
「だから嫌いです」
「そうですか、分かりました」
「分かってくれたならよかっt」
「とりあえず今から父上にご報告しに行きましょう!」
「はぁ!?」
「さぁ!そうと決まればさっそく父上の元に!」
「いや、だから何でそうなるの!」


利吉は私の腕を引いて強引に山田先生の元に向かう。やっぱりこの人は嫌いだ。人の話は聞かないし、何もかも展開が突然すぎる。でも何故か憎めない彼にふと顔が綻んだ。



夫婦


(父上ーっ!私達、夫婦になります!)
(助けて山田先生ーっ!)


090914.
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