「うっく、ひっく、」
「数馬いい加減に泣き止んで」
「うっ、だって…」


私の目の前でずっと泣いてる数馬。理由は至って簡単、実習で数馬とペアになった私は数馬のスキルである不運の巻き沿いを食らい、怪我をしてしまったからだ。そのことに責任を感じた数馬はさっきから泣いてばかり。仮にも忍者のたまごなのだから少しは逞しくなってほしいものだ。


「ごめんね名前、僕のせいで」
「もう大丈夫だって。これくらい何ともないよ」
「でもっ、血がっ…」
「大丈夫だよ。だから泣かないで」


私はそっと指で数馬の涙を拭った。数馬はまだ泣きそうな顔をして目尻にいっぱい涙を溜めていたが、必死に流すまいと我慢している。


「そろそろ行かないと日の出までに頂上に辿り着けなくなっちゃうよ」
「でもその怪我じゃ動けないでしょ」
「うん、動けないよ。だから数馬が一人で頂上に行って」
「そ、そんなの駄目だよっ!」


突然大きな声を張り上げた数馬に私は驚いた。普段、泣いてばかりの数馬が声を上げて怒るなんてとても珍しい。


「名前を置いて僕一人だけ頂上に行くなんて、そんなの絶対に駄目だよ!」
「数馬、」
「僕はっ…名前を守りたいよっ…」


また大粒の涙を零す数馬。本当によく泣く子だ、一体どれだけ泣けば気が済むのだろうか。


「数馬」
「うっく、ひっ」
「泣かないで、私を守ってくれるんでしょ?」
「ひっく、うん…」
「よし、いい子。肩貸して、片足なら使えるから」
「うん」


泣き止んだ数馬の肩を借りて私達は裏々山の頂上へと一歩ずつ、確実に歩を進めた。


「ねぇ、名前」
「ん?」
「これからもずっと僕が名前を守るから」
「じゃあ、私は数馬が泣いた時の慰め係りになってあげる」
「ぷっ、なにそれ」
「泣き虫な数馬のために傍に居てあげるって言ってんの」


少しそっぽを向きながら言ってやると素直じゃないなぁと笑って数馬は言った。少なくとも泣き虫には言われたくない。


「数馬だって素直じゃないよ」
「えっ、僕?」
「好きなら好きって言ったらいいじゃない。守るなんて遠回しなこと言わないでさ」
「うっ…」


顔を真っ赤にして言葉を詰まらす数馬。ふんっ、泣き虫のくせに私を馬鹿にしたからいけないんだ。


数馬が告白するまで後五秒、


泣き虫

(好き、名前が大好き)
(頬が一気に熱くなるのが分かった)


090913.
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