※現パロ



「…貴方、誰ですか」


初めは何かの悪い冗談だと思った。否、冗談だったらいいのにって思ってた。でも今更後悔したってもう手遅れだ、これは全て俺が招いた結果なんだから。


「お前のせいじゃねぇよ、三之助。これはあいつが自分から望んだことなんだ」


作兵衛はそう言ったけど俺はそうは思わなかった。だって、俺がちゃんと向き合っていれば名前は記憶を無くさずに済んだはずなんだ。俺が人を愛するのを恐れて、いろんな女に手を出して名前から逃げたから、逆に名前が苦しみに追い詰められてしまった。そして自ら死を選び屋上から飛び降りてしまった。だが、死ねなかった。そして命の代わりに名前は記憶を失った。自分のことも俺のことも全部全部忘れてしまったのだ。もう俺の知ってる名前はここにはいない、そう確信すると悔しさと涙が一気に溢れた。俺は名前がちゃんと俺のことを見ててくれてるって分かってた。頭では分かっていたんだ、でももし名前が俺を見てくれなくなったら…?その少しの弱い心に負けて俺は自分から目を背けた。それでも名前は俺を見ていてくれた、どんなに目を背けようとちゃんと見ていてくれた、そんな名前と向き合えなかった自分の弱さに酷く腹が立った。だが例え記憶を取り戻したとしても俺はまた名前から逃げてしまう、これから先もずっとずっと。だから記憶を無くしてる今、ここで名前と俺の関係を終わりにしてしまおう。そしたら思い出すきっかけも無くなるし、名前ももう苦しまないで済む。名前は幸せにならなきゃいけない人だから、それだけの価値がある人だから、どうか幸せになってくれな。


忘れる

(俺はただの通りすがりだよ、そう言って君の記憶から消えた)


100530.
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