私は宗教というものをよく知らない。だけれども、直線鬼を見ていると、教祖というのが彼で、彼を盲信する女子集団というのが教徒なのだろうか、と思うことがよくある。
今日も今日とて直線鬼は絶好調。十一月十一日という呪われた日に、彼は女子たちからの求愛を受け続けていた。
「新開くーん、ポッキーゲームしようよ」
「あっずるーい、私もしたい!」
冗談げにポッキーを口に咥える女子集団。それらに囲まれる直線鬼は、相も変わらずへらへらと笑い、何も発さない。一体この中の何人が、本気でポッキーを咥えているのだろうか。カオスともとれるこの状況に、部外者である私は吹き出す寸前だった。
が、今思うと私は笑っている場合では無かったのかもしれない。
◇
無言で読書をする私。横にいる直線鬼。夕焼け。物言わぬ窓。扉の硝子から見える延々と続く廊下。
静寂。ちょっと冷たい空気。の中に混じる甘さ。
と、直線鬼が咥えるポッキー。
「……クラスの女の子からもらったんですか?」
と、自分で言ったところで私は吹いた。
「じ、自前だよ……ナマエとポッキーゲームしたくて……」
吹いた私を不思議そうに見ながら、咥えていたポッキーを手に持つ直線鬼。面白い、面白すぎる。
「だってあの状況、面白すぎましたよ」
まるで蛇に睨まれた蛙。しかも蛇の数が多すぎて。
「当事者じゃないからそんなこと言えるんだよ……」
と、頭を抱える直線鬼。ふふ、面白い。……でも少しからかいすぎただろうか。ポッキー片手に落ち込む直線鬼を見たら余計笑いがこみ上げてきた。
私は椅子から少しだけ腰を浮かせると、俯く新開さんに顔を近づける。そして、産まれたての兎が必死に母親を探るように、頬を探すと、
直線鬼の丸くなった目が私を見る。私はちょっぴり恥ずかしくなって、彼から目線を外し、椅子に座った。
暫く無言の私達。烏の鳴き声。羽ばたく音。図書館中が紅潮していた。
「……ポッキーゲーム、しよう」
「いやです」
何故、と直線鬼に責め立てられたけれども、嫌なものは嫌なのだ。まだキスなんて、自分からできるわけがない。私はこう見えて、というか見ての通りの恥ずかしがり屋なのだから。
(右の頬があつい)
今日も今日とて直線鬼は絶好調。十一月十一日という呪われた日に、彼は女子たちからの求愛を受け続けていた。
「新開くーん、ポッキーゲームしようよ」
「あっずるーい、私もしたい!」
冗談げにポッキーを口に咥える女子集団。それらに囲まれる直線鬼は、相も変わらずへらへらと笑い、何も発さない。一体この中の何人が、本気でポッキーを咥えているのだろうか。カオスともとれるこの状況に、部外者である私は吹き出す寸前だった。
が、今思うと私は笑っている場合では無かったのかもしれない。
◇
無言で読書をする私。横にいる直線鬼。夕焼け。物言わぬ窓。扉の硝子から見える延々と続く廊下。
静寂。ちょっと冷たい空気。の中に混じる甘さ。
と、直線鬼が咥えるポッキー。
「……クラスの女の子からもらったんですか?」
と、自分で言ったところで私は吹いた。
「じ、自前だよ……ナマエとポッキーゲームしたくて……」
吹いた私を不思議そうに見ながら、咥えていたポッキーを手に持つ直線鬼。面白い、面白すぎる。
「だってあの状況、面白すぎましたよ」
まるで蛇に睨まれた蛙。しかも蛇の数が多すぎて。
「当事者じゃないからそんなこと言えるんだよ……」
と、頭を抱える直線鬼。ふふ、面白い。……でも少しからかいすぎただろうか。ポッキー片手に落ち込む直線鬼を見たら余計笑いがこみ上げてきた。
私は椅子から少しだけ腰を浮かせると、俯く新開さんに顔を近づける。そして、産まれたての兎が必死に母親を探るように、頬を探すと、
直線鬼の丸くなった目が私を見る。私はちょっぴり恥ずかしくなって、彼から目線を外し、椅子に座った。
暫く無言の私達。烏の鳴き声。羽ばたく音。図書館中が紅潮していた。
「……ポッキーゲーム、しよう」
「いやです」
何故、と直線鬼に責め立てられたけれども、嫌なものは嫌なのだ。まだキスなんて、自分からできるわけがない。私はこう見えて、というか見ての通りの恥ずかしがり屋なのだから。
(右の頬があつい)
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