「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」

 私はうざったいほどに彼に問い詰める。彼が返事をしないことを知っていながらも。

「ねえ、御堂筋くん」

 がん、と縛られ口を塞がれた彼入りのロッカーを蹴り飛ばす。右肩からずれた学ランには血糊がべっとりと貼り付いていて、彼の吐いた血が覗く胸元を汚していた。

「御堂筋くん」

 私は愛しくて堪らないんだよ、御堂筋くんのその気持ち悪い言動や身体や生態すべてが。君がこの狭いロッカーで身を犇めかせ、息を絶え絶えに吐血する様が。頭をあげようよ、ねえ。君の狂った顔がもっと見ていたい。

「……ねえ、御堂筋くん、マスクまっかっか、だよ。いい加減私に全部さらけ出そうよ?」
「……」

 彼はようやく顔をあげた。血だらけのマスクで、きっと潰れたばっかりの内臓が腹(なか)でぐるぐる言ってて苦しいはずなのに。なのにどうしてそんな反抗的な顔できるの。

「……キモっ」

 私は多分彼よりもずっと狂っている。そして、彼よりもずっと“彼”を愛している。本当に狂気的なのはどっちだろう。

(ラブソングも歌えない)





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -