佐久間と雅野
「コーチはなぜ右目に眼帯をしているのですか?」 その質問は前々から雅野が気にしていたものだった。 「気になるか?」 質問を質問で返された。 眼帯のことは触れられなくないことなのだろうと思った。 だけど、佐久間は続けて言う。 「見ればわかる。雅野なら見られてもかまわないが。」 少し目を細めて問われた。 雅野は「見たいです。」と呟いた。佐久間は慣れた手つきで眼帯を外した。 眼帯の下は右目があるのかないのか、怖いもの見たさの好奇心だった。驚いた。 言葉を失った雅野を右目は写していた。 「恐いか」 雅野が否定しようとした時、佐久間は悲しげに言った。 「何故だか俺の右目は昔からこうなんだ。皆怖がって寄り付かないから隠している」 「……コーチ、俺はコーチが怖いだなんて思いません。確かに驚いてはしまいましたが。コーチがこうして俺に教えてくれたのが嬉しいです。」 「ありがとう、雅野」 雅野を抱き締めて言う。一回りも年の違う雅野に否定されなかったことが嬉しかったのだ。
黒の真ん中に左目と同じオレンジを隠す瞼にキスをした。
20121008/01:21
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