ぐるぐるぐるぐる。生クリームを泡立てる。ぐるぐるぐるぐる。私の頭の中もぐるぐるぐるぐる。
静雄君に告白をされてから、私はずっとこんな調子だ。あの時の静雄君の林檎のように真っ赤になった顔がちらつく。きらきら光る金髪の髪にまっすぐな目。



「俺は、名前さんが好きです。」



全然気付かなかった、というのが率直な感想だった。静雄くんは私よりも5つも年下で、もし弟がいたらこんな感じかなぁなんて思っていた。それはまるで陽介さんの逆で。…静雄君のことはもちろん好きだ。だけどそれは陽介さんと同じで、弟のような男の子としてで、それは以上の感情があるのかわからない。



「………少し考える時間を貰ってもいいかな?」



わからない。そもそも静雄くんは私のどこを好きになったんだろう。5つも年上の私よりも、学校には可愛い女の子がたくさんいるんじゃないのかな。静雄くんは優しいしかっこいいしきっとモテるはずだ。なのに、……。年の差とか、気にしないのかな?私はどっちかと言うと気になる方かもしれない。でも年の差なら陽介さんと私だってかなり離れている。あれ、陽介さんとならあんまり気にしない、かも?静雄くんは年下だから?わからない。



「………わかりまし、た。」



わからない。私は陽介さんに恋してるのかな。静雄くんには、私が陽介さんに恋してるように見えたのかな。でも、そんなの、きっと静雄くんに言われなかったら気付かなかったと思う。陽介さんのことはずっと昔から好きだけど、デートしたり、手を繋いだり、キスをしたりしたいなんて考えたこともないし想像もできない。じゃあ静雄くんなら想像できる?…………。



「じゃあ、またバイトで、ね。」




わからないわからないわからない!!




「なにボーッとしてるの?」



「! 陽介さん!!」



「あー生クリーム混ぜすぎ。これもう喰えないよ。」



「な、なんでここに……。」



「ん?ちょっと店長にお話。」



いつの間にかキッチンに入ってきていた陽介さんを見て、小さな頃のことを思いだした。昔はこんな風に二人でよくお菓子を作ったんだ。楽しくて、褒められるのが嬉しくて、二人で作ったお菓子やケーキを食べるのが好きで。そんな何でもない時間が、好きだった。



「名前ちゃんには、先に話しちゃおうかな。」



「え?」



「俺ね、結婚決まったんだ。」



ぐるぐるぐるぐる。混ぜすぎた生クリームがこぼれて、私の頭の中は真っ白に染まった。





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