「臨也、静雄に何かした?」



中学からの同級生の岸谷新羅が、わざわざ違うクラスの俺の所に出向いてきたのは、テスト期間初日の昼休みのことだった。



「…俺は何もしてないよ?そもそも最近シズちゃんと遭遇してないし。」


「…じゃあ質問を変えよう。静雄が何であんな風になったか知ってるのかい?」


「……クッ、アッハハハッ!!おっかしいよねぇ!!あのシズちゃんが……!!アハッハハハ……笑いすぎで死にそうだよ。」


「相変わらず嫌な趣味だね。あと、みんなテスト勉強してるんだから静かにしなよ。」


「悪趣味なんて酷いなぁ。ってゆうか新羅も知ってるんじゃないの?ある意味シズちゃんが落ち込んでる原因を作ったのは君なんだから。」


「うーん大体予想はついてたけど……やっぱりそうなのかい?」


「本人に直接聞くのが1番いいと思うよ。」


「私は自殺志願者じゃないからそんなことするわけないだろ。」


「まぁとりあえずは様子見ってところかな。怖くて臆病な野獣の可愛い可愛い恋を応援してあげようじゃないか。ねぇ新羅。」


「破顔一笑して言われてもなぁ。」


「あれ、もう教室戻るのかい?」


「何か問題ある?」


「俺も行く。シズちゃん見に。」


「テストの邪魔だけはしないでね。」







俺の隣の隣の教室の扉を開けるとすぐにシズちゃんはいた。シズちゃんは廊下側の一番後ろの席だから扉から入ったらすぐ目の前。あのでかい図体と金髪が机に顔をうつ伏せているのがかなり悪目立ちしている。



「シーズちゃん。元気―?」


「…死ね。」


「もうすぐテスト始まるけど勉強しなくていいのかな。また追試になっちゃうよ?」


「…うぜぇ。」


「追試になったら大好きなバイトに行けないねぇ。ただでさえテスト期間で2週間休みもらったのにねぇ。」


「………。」


「まぁ今の君にとっては追試になった方がラッキーだったりして?」


「………テメェ。」


「おやおや?何を勘違いしてるのか知らないけど俺は君の恋を応援してるんだよ?ということでこれは俺からの餞別。これでも食べて頑張れば?」



それじゃお疲れー!と走って教室を出ると、いつもの聞きなれた怒声が後方から聞こえてきた。俺からの餞別、気にいってくれなかったのかなぁ。






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